Access-alivEその7


 二人から意識が外れていることを確認したディカンは、唐突に少女の方へと走り出した。

 思考は正確に――行動は迅速に。

 正確に思考が出来たのなら

       あとは迅速に行動するだけ。

 不意をつかれた格好の少女の服を掴み――そしてディカンは手を懐に突っ込む。

 手探りで、目的のものを探り当て取り出す。

 振り払い、“死を与え”ようとする、少女。

 「――無駄だよ。君は確かに最悪に対する切り札かもしれないが」

 ――ただの人間のぼくには、全く無力だ。

 そうして、ディカンは手に取ったリンクを空高く差し出した。

 生まれる光が、彼らを包む。次の瞬間、二人の姿は掻き消えた。

 「――な」

 傍でただ見ていた最悪は、そうとしか呟けなかった。





 ――そう。机上に並べられた駒が手詰まりになったのなら。

   誰でもいい。横合いから現れて、机ごと蹴っ飛ばせばいい。

   それで――築き上げられた世界は、あっさりと崩壊する。









 きぃ、とドアが開いた。

 「――当主」

 一人の男が、そう耳元でささやいた。

 「何?」

 「目をつけていた通り、団長が一人解決に向かったと」

 「あら――都合がいいじゃない。

  丁度、反対の席に座る相手と、ゲームを台無しにする人材が見つかって。

  彼、策士だなんて呼ばれているんでしょ?」

 「え……ええ」

 「それなら、そう時間があるわけSじゃないわね。さっさと出かけるわよ」

 「――どこへ、ですか?」

 「決まってるじゃない。その策士、団長が現れるところよ」

 席から立ち上がる。

 「わざわざ蹴りを入れる役目代わってもらったんだから、

  駒を拾って好き勝手並べなおす作業くらい、私たちがやらないと」









 最悪。最悪の名を継ごうとしたモノ。策士。鏡。“死を招く少女”

 騎士団。鏡家。

 ルアス街。サラセン森。

 そして、神々。

 誰だって、最初からこんなつもりじゃなかっただろう。

 最悪も、それを受け継ごうとしたものも――好きで暴走したわけじゃない。

 そして彼らを利用しようとした鏡も、神にそこまで介入されると思っちゃいなかった。

 そして彼らを滅ぼそうとした神も、ここまでないがしろにされているつもりは、全く無かった。

 辻褄あわせの策士も――本当のところは、何も気がついていなかった。





 はじまりはゼロで、終わりはゼロの物語なのに。

     プレイする存在は誰しも手詰まりとなった。