第11話


「クーリエさんですか?」
そう訊いてきた盗賊の衣装の女性は、穏やかな表情だった

「そうですが」
とオレも穏やかに返事したけれど
目の前の女性から、不安なものを感じていた


「ライズをご存知ですか?」
やや沈黙が続いた後に女性の方から切り出してきた

「知ってるよ。昔一緒によく狩りをしてたからね。」
自分自身、なんとなく気が付いていたのかもしれない。
穏やかな口調のまま、答えていた


「・・・。」
目の前の女性が再び沈黙した。
何か言いづらい事でもあるかのように

オレは目の前の女性の次の言葉を待った

「実は・・・。」ようやく切り出した話の内容。
しかし、それは聞かないでおけば良かったと思うコトだった


「ライズは、行方不明になってしまいました。」

「どうして?!」

「分かりません。しかし、行方不明になる前に私にコレを・・・。」
そう言って渡されたのは封のついた手紙だった


呆然となってるオレの様子に気がついてるのかどうか
目の前の女性はいろいろ話し掛けてくる

「私は、ライズの妹なんです。盗賊、前からやってみたかったので♪」

陽気に話してる女性の声は、ほとんど聞こえなかった


ミルレスの町・・・夕暮れ時。

どこをどう歩いてたのか分からなかった。
何度か誰かにぶつかったらしいが、そんなものどうだっていい

頭の中は空っぽで、ただふらふらと歩き回っていた

「ぉ!クーリエさん、発見!!」
と修ユアンこと修やんが話し掛けても上の空

(なんかおかしいぞ?(・A・)?)
異変に気が付いた修やんは、クーリエの顔をのぞきこんだ

クーリエの目は、焦点がぼやけていた

(またなんかあったな、これは^^;)
と修やんは苦笑していたが

(このまま放置してたら、どこ行くか分からんな^^;)
と判断して、クーリエをひょいっと背負うと
自分の家に連れて行った


ミルレス町、武器屋地域・・・。

この地域の一角に修やんの住む民家があった

「おーい、ついたぞ。」
と家の中に入った修やんは、背負っていたクーリエをゆっくり下ろした
クーリエはまだボーッとしている

「全く。何があったか知らないけれど、コレ飲んで元気出せ!」
と修やんは、ズイッと何かの飲み物を渡してきた

しばらくボーッとしているクーリエだったが
渡された飲み物に気がついて一口飲んでみた

「・・・。」
久しぶりに飲んだモス酒で気分がちょっとだけ軽くなる

「今日、ライズの妹だって言う人に・・・会った」
やっと一言だけ言葉が言えた

「ふーん。ライズってのは昔の友達とか?」
修やんはモス酒を一杯飲んで訊いた

「うん、オレがLv低い時に一緒に狩りした友人だよ。」
コップに入ったモス酒をまた一口飲んでオレは答えた

「へぇー、クーリエさんにもそんな過去があったんだね」
と修やんは、自分のコップに酒を入れながら笑った


「でも、今日驚いた。ライズの…アイツの妹から」
言いよどんだ。でも・・・

「アイツの妹から、聞かされたよ。ライズ…行方不明なんだって」
やっと出た言葉。でも、その後は…言葉が続かなかった


「そっか。けどよぉ、クーリエさん。
だからと言って、アンタも行方不明者にはなるなよ。」
修やんが半分酔っ払った状態で釘をさす

「・・・そうだな」
わずかに頷いてオレはコップに残った酒を飲み干した

それから数時間ほど2人で酒を飲んでいた
けど、その後はオレが先に酔いが回って眠ってしまった


ミルレス町、昼間・・・。

「う・・・。」
ボーッとした目を擦って目を覚ますと、そこは見知らぬ家だった

「煤i・A・;)(ここは、どこだ?!)」
思わず周りをキョロキョロ見回したが、やっぱり分からない


(えーと。)と混乱している様子で更に辺りを見回すと
オレの近くでグースカ寝てる修やんがいた

(…まさかとは思うけれど、ここは修やんの家?)
改めて周りを見回すと 家の中はすっきりとしていて
あんまり物と呼べるようなモノがない

(初めて来たなぁ。)
修やんを起こさないようにそーっと歩く
修やんは気が付く様子もなく寝ている


「そっか。けどよぉ、クーリエさん。
だからと言って、アンタも行方不明者にはなるなよ。」

昨日言われた言葉を思い出した

もしオレ一人なら、姿をくらましたかもしれない
でも、妹が居たと知った今ではそれも出来ない

ただ・・・。

ただ一つだけわがままがあるとするなら

真実を・・・事実を知りたい。

さすがに修やんに黙って帰るのは気まずいので
オレは修やんの側に座りなおして待つことにした

時間が・・・ゆっくりと過ぎていった・・・。