『神々のその後〜普通に戻る世界〜』


マイソシア大陸、ミルレス町のある民家。AM6時。

「ギィ・・・」と民家のドアを開けて外に出たのは、一人の聖職者。

外の空気を吸いに来たのか? はたまた天気でも見るために外に出たのか?

聖職者は、外に出ると草の絨毯の上に座った。


「どうやら、異常気象はおさまったようですね…。」とわずかに呟く聖職者。

その一言が出た理由は、今までこの時間からわずかに空気が温くなっていた。

その影響もあってかもしれない。

今の空気の感覚は冷たく、わずかに肌寒さを感じる。

…とその時。

ガチャッ!!と民家のドアが開いた。


「おや、おはよう。(^^」

と聖職者は思い切りドアを開けた張本人に笑顔で挨拶した。

「目を開けたら、ししょーが見当たらなくてビックリしましたよ!(><」

聖職者をししょーと言うのは、幼い男の子。

その格好は、聖職者のLv1服の格好だった。


「ごめんね。でも、ここ最近。暑い日が続いていたでしょ?

だから、今日はどうかなーって思ってね(^^」

心配する弟子にやんわりと謝りながらも、それでも笑顔が崩れない聖職者。

(全く、この人は〜(・・;))

とそんな師匠に少しあきれ返りながらも何も言い返せない弟子。

そして、その弟子を笑顔で見る聖職者は

(まだまだこの子からは、恐怖が抜けてないのだな。)と思った。


実はこの弟子、ちょっとワケありだったりする。

去年の夏のある日。

彼はまだ何も知らない様子でミルレスにやって来た。

どこへ行けばいいのかも、どこにどんな店があるのかもわからず

ただ町中を行ったり来たり。

おぼつかなげに町を歩く様子は、明らかに分かりやすかったらしく

「どうしたの?」と一人の子供が声をかけてきた。


彼は、自分が何をすればいいのか分からなくて困っていると言うと、

子供はピンキオの前まで連れて行った。

その後、森まで連れてってあげるよ。と言った子供を優しい人だと思ったらしい。

ところが…。


森まで行く道の途中で彼は、流れのゆるやかな川に落とされた。

何で?!と思った彼の気持ちに構うことなく、子供は町の方へと逃げた。

夏の暑い日とは言えど、川の水温はとても冷たい。

必死で川から出ないと・・・と思っても、その術を知らない。

川の水は、その間も一人の幼い聖職者の体温と体力を奪っていく。

(誰か助けて!)と川でもがいていても気が付く人はいなかった。


(おや、あれは…。)

森にいる知り合いから蘇生を頼まれて戻ってきた一人の聖職者が

川の近くを通りかかって、誰かが溺れていることに気が付いた。

(…せーの!)と勢いで川に飛び込む聖職者。

どぼーん!と何かが落下した音。

その音で幼い者の意識が少しだけ戻った。

音のした方から見えたのは、21服のカッコの聖職者が

泳いでこっちまで向かってくるところだった。

「たすけ…。」助けて!と言おうとした幼い聖職者は、

21服の格好の聖職者に手刀を入れられて意識がとんだ…。

(ああ、コイツはさっきのヤツより最低だ…。)

遠のく意識の中でそんな一言が頭をよぎった。


この後。助けられたのがきっかけで彼は、今の師匠の弟子になった。

「でも、また寒くなるね。(^^」と笑顔で言う師匠にハッとした弟子は

慌てて家の中へ入った。

どうやら寒さが限界にきたらしい。

「さて、戻ろうかな(^^」と師匠も民家の中へと入っていった。


マイソシア大陸1月30日。異常気象の収まった日。

大陸という『世界』は再び元の日常へと戻っていった。

しかし、太陽の世界では不穏な流れが再び出てこようとしていた。