『ナゾの薬、騒動記』 その5


薬屋地域のクーリエの家…。

中に入るとそこには確かにイリュームの兄弟が勢ぞろいしていた。

部屋には四角形テーブルを囲むようにソファーが2対あって

そのソファーの1対には、

ラファンとクオンタムが座ってお茶を飲んでいた。

そうそう、この兄弟のコトを知らない人のためにも説明しなきゃだね。


オレを家の中に入れてくれた『つんつん頭の魔術師』は、長男のクーリエ。

一見してるとのほほんそうに見えるけれど、頭はそこそこ切れる兄貴だ。

オレは「クー兄」と呼んでいる。


ソファーでのんびりお茶を飲んでる女性は、長女のラファン。

クー兄ともども『のほほん』なように見えるけれど、こっちもある意味キレ者。

聖職者だが、怒ると笑顔で毒舌を吐き、その怒りは攻撃力にも影響する。

かなり前にこの姉貴を怒らせた戦士3人がアメットごしに

カルタハンマーで殴られ気絶…なんてことがあったぐらいだ。

それ以来、兄弟の中では『姉を怒らすべからず』という暗黙の了解がある。

オレは「ラファ姉」と呼んでいる。


最後にラファ姉と対のソファーでお茶を飲むのは、次男のクロスティア。

職業は戦士だが、彼は、さっきの2人よりものんびりしている。

特にキレ者という訳でもなく、まったり主義者なところがあり

Lv上げに対してもハングリーでなかった為。

未だにLv11服の格好だった。

でも、普段はほとんど眠っていて起きてくることがあんまりないから

起きてること自体がかなり珍しい。

ちなみにオレは、名前を呼び捨てにしている。


「最近また怒ったらしいね?ラファ姉。」

ぼーっとお茶の入ったカップを見ながらクロスティアが呟いた。

「私のコトをオカマさんと間違えるような不届き者は、

お仕置きしないと分からないでしょ(^^」

クスッと無邪気に笑うラファン。もはやこの時点で毒舌が出ていた。

「ラファ姉らしいや。(^^;」

苦笑して、クーリエと対のソファーに座るイリューム。

その右横で無言ながらも『うんうん。』と頷くクロスティア。

「でも、ラファン。くれぐれも無茶をしては、いけないよ(^^;」

と苦笑まぎれに言うクーリエに

「お兄ちゃんに言われちゃ仕方がない。なるべく我慢してみますわ(^^;」

とラファンは、苦笑で答えた。

「でも、珍しいね。クロスティアが起きてるなんて。」

とオレは、クロスティアを見た。

「そう?1ヶ月前にも起きたんだけれど…。」

黒い大きな目がきょとんとした様子でイリュームを見る。

「しかし、何よりも珍しいのは…イリュームね。」

とラファ姉の目がオレを見る

「え?」

「だぁってぇ、イリュームが女になっちゃうんだもん(^^」

これは面白い♪とでもいうような顔でラファンが微笑む。

嫌な予感がやって来そうな気がする…。


「イリューム、一緒にお風呂にでも入るー?(^^」

女同士だしwとラファンは、とんでもないことを言ってきた。

クーリエは、飲んでたお茶が器官に入って咳き込んで

オレはオレであやうくお茶を噴出しかけた。

残ったクロスティアは、のんびりお茶を飲んでるようだが、

ラファンから視線を外していた。

「冗談でも、言うなぁーーー!!(>□<)」

やっとこ落ち着いたクー兄と一緒に叫んだオレ。

ラファ姉は「えー?(・・?」とケロリとしている。

「ラファン…。『親しき仲にも礼儀あり』だよ(^^;」

とクー兄がさりげなくダメ出ししている。

「はぁーい(・・」残念って感じでラファ姉が返事をする。

(よ…良かった。)オレとクー兄の2人は安堵した。

さきほどまでラファンから視線を外していたクロスティアも

ラファンの方に向き直ってお茶を飲んでいた。

結局、この後延々と兄弟4人でおしゃべりをした。

この4人が揃うこと自体もあまりなかったので

いろいろな話で盛り上がった。

そして、薬を飲んでからの長かった1日が終わった…。


効果が切れるまであと2日…。