第19話『調子の狂う日・吹っ切れる日』


「もしかして、あなたがディカンプール・・・さん?」

オレは思わず質問していた。


「そうですが。」

目の前の盗賊は、お茶の入ったカップを両手で支えるように持ちながら

ガブリエルの一言を肯定した。

(うはっ!オレ、とんでもないトコ来てしまったのか煤i^^;)

オレは、心の中で思いっきり驚いた。

(本当に居たんだ。同じ世界の中に…。)

伝説だ何だと騒がれていたので、あんまり信じていなかった…方だった。

「…で、訊きたい事とは?」

目の前のディカンに訊かれて、ガブリエルは

「ここの町のコトをいろいろと教えてほしい。

ここに住んでいる人なら、それも詳しいだろうと思ってね。」

そう話を切り出していた。


「話すとちょっと長いですが…・。」

と前置きして、ディカンプールは、ルアス町の説明を始めた。

「ここルアスの町は、アスガルド唯一の王都です。王様のいる町ってコトですね。

城には騎士団部隊もある為、騎士を町の中でみかけることもあるでしょう。

ただ、窃盗と誘拐が多発する町でもあります。

その事例として、時折、強引にアイテムを盗む者。

PT許可状態の者をリンクでどこかへ連れて行く者がいます。

どちらに対しても気をつけて下さい。(・・」

一通り言うと、ディカンはカップに残っていたお茶を飲む。


「了解。それと、空き民家の見分け方は?」

と再び訊くガブリエルに

「人が来ないかどうか・鍵がかかるか・荷物があるかだと思いますよ?」

しかし、ぼくは不動産屋じゃないのですが…とディカンが呟いた。

「違いないな(^^」にこりと笑顔でガブリエルが言った。

そして、

「さて、ディカンさんだっけ?いろいろ教えてくれてありがとう(^^」

とディカンにお礼を言うと、ガブリエルはアジトのドアをパタンと閉めた。

再び一人になったディカンは、温かいお茶をカップに注いで飲んでいた。

この数時間後に謳華さんがやってくることとなるが、それは別のお話。


ディカンと別れて、ガブリエルは歩き出していた。

(オレはもう、勝手気ままに過ごしていこう。もう誰のことも気にせず、

顔見知りに会っても気にすることなく、自分の好きなようにやろう。

もうティアイエルも関係ない。Lv差でがむしゃらになることもない。)

思いっきり吹っ切れたような気分で歩き出した。


ディグバンカー前

「コンビネーション!」

「マシンガンキック!」

ティアイエルは、暴れていた。

彼女の周辺には、おじさん3匹に吹き矢が4匹倒れていた。

「ティア!今日は、リキ入ってるなぁ(^^」

でも、それがカッコイイけどなぁwとラティが笑って言った。

「ありがとう(^^」と笑顔で言うティアイエルだったが内心、怒っていた。

そして、その怒りの発散元は、モンスターに向けられた。

(あー腹立つっ!いきなり悪口言ったかと思ったら、消えちゃうし!!

全く、これじゃ言い返したくても言い返せないじゃない!!

ガブリエルのバカぁー。せめて悪口言わせろー!!(・・#))


昨日の夜…。

消えたばかりのガブリエルの部屋で、ティアイエルは落ち込んでいた。

(何で消えたの?さよならも何も言わずに…。)

(それにあんな…酷い事、言って…さ。)


「それとも何か?困ってる奴を見ると放っとけないって奴か?

とんだご都合主義だな。というより極度の甘やかし過ぎにしか見えん。

まぁ、救ってもらいたいとか願ってる奴からしたら、都合がいいけれどな。

…オレにとっては余計なだけだ。それともうオレには関わるな。」

この最後の言葉がグサリときていた。

(困ってる奴を見ると放っとけない…か。ホントにそんな気持ちあったのかな?)

考えてみる…あったかもしれない。

(でも、結局言い返せなかった…。)

ふと気が付いた。これはこれで、かなり悔しい。

(決めた!なんとしても見つけた日には言い返してやる!!(・・#))

こうしてティアイエルの中の悲しみは、怒りへと変貌を遂げた。


再び、ディグバンカー前

「マシンガンキック!」3連発で攻撃をいれて、おじさんを倒した。

そして、すかさず近くの吹き矢をコンビネーション2連発で仕留める。

(ぜーーーったいに言い返してやる!!)

『不屈の女』は、やっぱり『不屈』だった。

しかし『不屈の女』ことティアイエルに思わぬ情報が入って来ることになるとは

この時、張本人も気が付かなかった。