第7話『現実世界とアスガルドU』

 
『現実世界』、放課後・・・・・・

健太は、友人3人と一緒に学校帰りの道を歩いていた。

「でっさぁー。今日の先生、誤字ってばっかでやんの。」

「えー?!マジ?オレならそんな時、すかさずツッコミ入れっぞ。」

友人のタカシと祐二は、笑い話をしている。

オレもその話が面白くて、笑ってたけど・・・・・・。

「お!そいじゃー、オレこっちだから。じゃーなー!」

そう言い残して、タカシは家の方向へと走って行く。

「またなぁー。」

「タカシー!また明日学校でなー!!」

祐二とオレが手を振った時には、タカシはもういなかった。

それから少し歩いたところで、祐二とも別れた。

それから先の道を一人でしばらく歩いた。

(あともうちょっとで家。一旦ランドセル置いたら由斗のウチにい―――)

思考が止まった。オレの家の前に由斗が立っていた。


「ゆう・・・・・・と?」オレはビックリした。

1週間、無断で学校休んでる張本人がオレの家の方を向いて立っている。

その視線がオレの方に移動した。そして・・・・・・

「ケン兄ー!」と叫んで由斗が走ってきた。

何でか気が抜けて、オレはビックリした顔のままで由斗にひっつかれていた。

「お前・・・・・・由斗なんだよな?」オレにひっついてる奴の顔を見た。

「やだなぁ・・・・・・顔、わすれたの?」由斗がクスッと笑った。

(違う・・・・・・、コイツは由斗じゃない!!)

とっさにそう感じたオレは、目の前の由斗の体を突き飛ばした。


「あーあ。バレちゃったか。」突き飛ばされた由斗は、むくりと起き上がった。

「お前は、誰だ!!」健太は、由斗に向かって怒鳴った。

「私は『アスガルドの闇』。アスガルドの中で生きている闇です。」

由斗の格好した奴は、うやうやしく礼をする。

「アイツをどこにやったんだ!由斗を返せよ!!」

そう怒るオレに『闇』は、

「あなたの友達は、『アスガルド』の中です。精神、抜けてるから起きませんよ。

悔しかったら、取り返す為に『アスガルド』に乗り込むしかないですね。」

嫌味いっぱいに言うと『闇』は、由斗の家の鍵を魔力で開けて入ってしまった。


(何が何だか分かんねーけど、由斗が危ない!!)

慌てて健太は、由斗の母親からもらった合鍵を使って家の中に入った。

「クスクス、人間って単純だね。さて、またゲームは面白くなりそうだよ。」

由斗の格好をした『闇』は、由斗の家の屋根でそうごちるとフッと消えた。


由斗の部屋・・・・・・。

「おい、由斗!!」部屋のドアを開けようとしたが、開かない。

(くっそぉ、カギでもかけてやがんのかよ。)と舌打ちするが意味がない。

「由斗―――!!」と叫んでドアを開けようとすると

「カチャ・・・・・・。」とドアが容易に開いた。

「由斗!」とベッドで眠る由斗に声をかけて起こそうとするが、

由斗は、一向に目が覚める様子がない。

「精神、寝てますから・・・・・・。」さっきの『闇』の一言を思い出す。


「ちっくしょー、オレは何も出来ないのかよ!!」

健太は、悔しさでいっぱいになった。


その頃、アスガルドのイアサーバ・・・・・・

「???」と本物の由斗こと『ユウト』は、きょとんとしていた。

「ユウト?」と不思議そうな顔で見るエル。

「今ね。ケン兄の声が・・・・・・きこえた。」と空を見ながら、ユウトがぼやいた。

「ケン兄?」

「えっとね、ぼくのおとなりにすんでる『おにいちゃん』。

アスガルドにもキャラ持ってて、『こう』って名前のとうぞくさんのリアルさん。」

とぼくは、せつめーした。

「こう?ああ、あの人ね!」とエルは、ポンと手を叩いた。

以前、エルと晧は、アスガルドで5回ほど組んだことがあったのだ。

「うん、あの人のリアルさん。でも、会いたいなぁ・・・・・・。」

由斗は、空を見ながらそう呟いた。


「由斗!由斗!!」意識が抜けてる由斗の体を揺すりながら

健太は、由斗の目が覚めることを祈った。ところが反応がない。

「なぁ・・・・・・。」と言いかけたその時。

「『だから、無駄だって言ってるのに、ケン兄分かってないね。』」

オレは、由斗の体に何か憑依したことに気が付かなかった。

「『眠っちゃえ、ぼくといっしょに・・・・・・。ずーっと』」

由斗はそう言うと、寄りかかってきた。

そして・・・・・・。オレは眠ってしまった。

由斗から何かが抜けた後、再び由斗の体は、ベッドに倒れた。

「さぁ、準備は揃った。後は、流れのままに・・・・・・」

由斗の姿をした『闇』は、パソコンの画面に吸い込まれた。