第6話『現実世界とアスガルドT』


アスガルドに入って、1週間が過ぎた・・・・・・。

ぼくことPC名『ユウト』は、持ちキャラの『エル』の補佐でLv上げをしていた。

今、ようやくLvが21になったくらい。

「おめでとう。はい、これ。」

エルが『コークスクリュー』※1と『セルフヒール』※2のスキルブックを買ってくれた。

「ありがとう。^^」さっそく覚えて使ってみた。

いりょくは、かなりよさそうだった。

(エルといっしょにがんばろう。)エルを見て、そうおもった。


しかし、ぼくは知らなかった。

ぼくのいる『げんじつ』の方で大騒ぎになってることに・・・・・・。


『現実の世界』・・・・・・。

「あのぉ。由斗くん、ここ最近、学校に来ないんですが・・・・・・。」

1週間経って、由斗のクラスの浅葱先生が職員室の会議でそう切り出した。

「だれですか?その子は。」先生の一人が質問する。

「私のクラスの子なんですが、ここ1週間学校に来てないようなんです。」

浅葱先生は不安そうに言った。

「まぁ、あれじゃないですかぁ?不登校とか。」

冗談まじりに言う先生の一言で

「まさか、私の力量不足でしょうか?」と浅葱先生は、おろおろしだした。

「ともかくですな。ここは一つ、その由斗君の家に電話を入れてみては?」

保健の先生がそう提案した。

「ダメです。由斗君の家、両親が共働きなので、この時間にはもう居ないんです。」

と浅葱先生は、首をわずかに左右に振った。

「では、こうしませんか?」ある先生が提案をした。

「その子と家が近い子に呼びかけてもらうのですよ。」と先生の一人が言い出した。


それから『昼休み』・・・・・・。

「健太君、校長先生から呼び出しよ。」

担任の浅丘先生に呼び出されたのは、一人の男の子だった。

彼の名前は、『西川健太』小学3年生。

「えー、オレ何か悪いコトしたぁ?」

健太は、不服そうな顔で浅丘先生を見た。

どうやら健太のイメージの中では、校長に呼び出し=悪事をした奴限定

…と思ってるらしい。

「さぁ、どうかしら?とりあえず、ついてきてちょうだい。」

と言われて健太は、しぶしぶ歩き出す。

(マジで悪事とかで呼び出される覚えは、ないんだがなぁ。)

と思いながら、健太は校長室へと歩き出した。


その頃、アスガルドのイアサーバ・・・・・・。

「ユウト、ガンバレッ!」

エルに補佐されながら、ユウトは『ナイトモス』※3を狩っていた。

「コークスクリュー!」

腕全体が回転して、ナイトモスを倒す。

「今、何%?」

回復しながら、エルが質問した。

「えーと、今は46%」

「あと4%で50%だね^^」

嬉しそうにエルが言った。

「50%までがんばろー^^」

ぼくも嬉しそうにそう言った。


『現実の世界』、5分後・・・・・・。

校長室の中で、健太は緊張していた。

(うー。一体何の用なんだ。早く言ってくれよ、先生。TT)

そう思ってても校長は、なかなか話を切り出さない。

(頼むから、早く言ってくれー。緊張に負けるー!TT)

内心、緊張状態が苦手なので黙りこくる先生に我慢ができず。

「先生、話って何なんですかぁ。」と健太は、話しかけた。

「実は・・・・・・。」とその場にいた浅葱先生が話し始めた。

「・・・・・・なんだって?!」と健太は驚いた。

「それであなたは由斗君と家が近いでしょ?だから、悪いんだけれど・・・・・・。

由斗君の様子見に行ってくれないかしら?」

浅葱先生にそう言われて 健太は

「放課後、学校帰りに行ってみます。」

そう答えた。


校長室を出た健太は、緊張から解放されたと共に、由斗のことを思い出していた。

(アイツ。最近見かけないと思ってたけど、休んでいたのか。)

由斗とオレは、家が『おとなりさん』だった。

多分それで今日の呼び出しが、かかったんだろう。

(放課後行ってみっか。何かあったら、話でも聞いてやるかぁ♪)

そう割り切って教室へ戻ろうとした刹那。

(「ケン兄ー。」)背後から、由斗の声がした。

「由斗?!」振り向いたが、何もなかった。

(あー、ビックリした。幻聴かぁ^^;)

わずかに冷や汗をかきながら、健太は教室に戻って行った。


アスガルド・・・・・・出入り口・・・・・・

「不吉じゃ、不吉な空気が動き出した・・・・・・。暗黒の力が強くなっておる。

アスガルドの神々たちよ。どうかこれ以上の災いが起きぬことを

ワシと共に祈って下され・・・・・・。」

老賢者は・・・・・・闇の中、ひっそりと祈りを捧げた。


しかし、闇は少しずつ広がっていた。

ゆっくりと・・・・・・足音を忍ばせながら。


※1 コークスクリュー:修道士の技。えぐるように打つべし打つべし。 ※2 セルフヒール:自分の傷を癒す。怪奇現象(マテ ※3 ナイトモス:モス系のモンスタ−。公式設定では、ハチのキメラとなっている。          槍を構えているけど、見た目よりも強くはないらしい。