『過去の出会い、今の友人2』 本を広げると、そこには不思議な世界観がそこにあった。 内容は、『月と太陽にまつわる神話』のようなものだった。 「『つき』と『たいよう』は、ほぼおなじくらいにうまれました。 まだそのころ『あさ』と『よる』は、ありませんでした。 『つき』と『たいよう』は、ずっとそばにいました。 しかし、おたがいに『はなしをする』ことはなく、 いっしょに『せかい』をまわっていました。」 (ちかくにあるのに、だまってたまんまだったんだ(・・)) エリアは、次のページを開いた 「しばらくのあいだ、はなすことがなかった『つき』と『たいよう』 しかし、たまりかねた『たいよう』が口をあけて、こういいました。 『きみは…ずっとなにもいわないけれど、なにもおもわないの?』 すると『つき』がいいました。 『なにもおもわないことは、ありません。』 それまでだまっていた『つき』がそういいだしたので うれしくなった『たいよう』は 『それなら、おもっていることをはなしたらどうですか?』とききました。」 (そう言えば、太陽っていつも近くに見えるから別に気にしてなかったけれど こんな話があったんだ(・・)) ふーん。と言いそうな顔で次のページを開く。 「それから『つき』と『たいよう』は、よくはなすようになりました。 『たいよう』は、その日のことをたのしくはなし、 『つき』は、それにたいして、たのしそうにわらったり いけんをいったりして、それはたのしそうでした。」 (どんなこと、言ったんだろ?(・・?)) 単純な好奇心といっしょに次のページを見ると 「まいにちいろいろな『はなし』をする『たいよう』 そして、それをきくのがたのしくなってきた『つき』 ところが、きょうにかぎって『たいよう』は あんまり『はなし』をしてくれません。」 無言のまま、エリアは次のページを開く。 「どうしたのだろうか?とおもった『つき』は 『どうしたのですか?』とききました。 『たいよう』は、なやんだすえに 『ぼくと『けっこん』してくれませんか?』 とききました。」 (ルーン姉さまの相手の人も、こんな風だったのかな?) 相手が太陽の世界の人だと知ってるせいか、何となくそう思ったエリア。 次のページを開く。 「『たいよう』からそういわれて『つき』は、こまりました。 しかし、なんにちもかんがえて 『つき』は、『たいよう』とけっこんして、ふうふになりました。」 ぱら…とページをめくる音だけが部屋にかすかに聞こえた。 「しかし、『つき』と『たいよう』が いっしょにいることは、かないませんでした。 『つき』と『たいよう』がまわっていた 『せかい』に『ひと』があらわれるようになった時。 『つき』と『たいよう』は、ひきはなされてしまいました。」 (なんか、かわいそうだな(・・`))とちょっと思いながらも 次のページを見るエリア。 「『つき』と『たいよう』がひきはなされるとき。 『つき』は『たいよう』にこういいました。 『あなたのせかいで『こどもがうまれたら』 そのときは、わたしもおなじくらいに『こどもをうむから』 あなたといつかまた会うために』 それからというもの、 『つき』では、『たいよう』のせかいでこどもがうまれると 『つき』でもこどもがうまれるようになりましたとさ。」 本の内容は、ここで終わっていた。 しかし、この本が幼いエリアの中にわずかながらも影響を残したことは 確実だった。 (私と同じ時に生まれた人が太陽の世界にいるかもしれない) 幼いながらも、エリアはそれだけは理解していた。 いつか会ってみたい。という気持ちと共に…。
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