『拝啓 オヤジ殿〜対立〜』


ミルレス某所、クーリエの家。

今、この家の居間の辺りは、険悪な空気が流れていた。

クーリエとロリス。

長男と父親の2人がその空気を作り出していた。


「お母様…お兄ちゃんとお父様、大丈夫なのでしょうか?(・・;」

と心配そうな顔でラファンが聞いた。

4兄弟の母親のマリーシャは

「大丈夫よ、ラファン。少なくとも血みどろの争いにまでは、ならないから。」

と笑顔で言ってのけた。


(いや、そうじゃなくてね、母さん。(^^;))

とイリュームが思ったのは、母親の感覚が何となくズレていたからだ。

しかし、やはりラファンの母親でもあるせいだろうか?

マリーシャは、ただ笑顔で見ていた。

テーブルの辺りで静かに巻き起こっている長男と父親の対立を…。


「全く。まさか本当に魔術師になってしまうとはな。」

落胆気味にロリスが呟いた。

「父親が戦士だからって、息子まで戦士にならなくても良いと思ったんだよ。

戦士は、世襲制ではない。

職業だって世襲じゃない、選択の自由があるんだ。」

と冷静に言い返すクーリエ。

「ほぉ、最もな意見だ。だが、お前には戦士になってほしかったがな。」

とクーリエを睨むロリス。

「へぇ、随分な言いようだね? だったら何で言わなかったのさ。

オレが生まれて、まだ職業選択の適齢期でなかった頃に。

そしたら、まだ可能性あったかもよ?(^^」

にこりと笑顔で切り返すクーリエ。


「戦士は世襲じゃないが、見えないところでは一部で世襲に近い空気もある。

その空気すら読めないとは、情けない長男だな。」

とロリスは、切って捨てるように言葉を吐いた。

「何とでも言えばいい。オレは世襲なんて空気は、スキじゃないし

第一、オレには荷が重過ぎる。

空気に気がついてはいたけど、オレは父さんの思いに

答えられるほど、自分が偉大だとも過大評価されようとも思わない。

過大評価され続けてきた人間の一部は、堕落する奴もいるからね。

だったら、自分のやりたいことをやりながら生きていくのが賢明だと

そう思ったのさ。」

以上。とクーリエは、言葉を切った。


「それまでですね(^^」と笑顔でマリーシャが止めた。

「はぁ…。どうやらオレは負けたらしい(^^;」

と苦笑してロリスが言った。

「勝った(^^」とクーリエは、嬉しそうだった。

「は?どういうコト?」

終始状況を見ていたイリュームが不思議そうに疑問系で訊いた

「要するに、口ゲンカで勝負していたのですね(^^」

とラファンが笑顔で言う。

「そういうコトです(^^」と母親のマリーシャが答えた。

「なぁーんだ。オレ、てっきりマジで口ゲンカしてるのかと思った。」

「イリューム。あれ、マジでやってたよ。」

とすかさずクロスティアの一言が入る。


(マジで口ゲンカで真剣勝負って…クー兄と言い、オヤジと言い。

何だかなぁ…器用というか、ムチャクチャというか…。)

とイリュームは、思った。