『拝啓 オヤジ殿〜会話〜』


その後、父さんとオレのピリピリした空気は、嘘のように消えた。

母さん曰く、

「言いたいこと言えたからスッキリしたのよ、きっとね。」らしい。

結局この日。父さんは、オレの家に泊まって行くことになった。


日が暮れるまで父さんといっぱい話している兄弟。

オレはさっきのケンカで十分言ったから、これ以上言うこともない。

ただ父さんと兄弟達の話を聞いて笑ったりしていた。

なんてコトない、他愛ない会話。でも、なんだか気分が楽しかった。

久しぶりに母親の作った料理も食べた・・・美味しかったし、懐かしい味がする


それから更に時間が経った…。

「…。」何となくオレは、所在なさげな気がして家から出ると

無言のまま、すぐ近くの草の絨毯の上に寝っ転がった。

今は真夜中…。

誰も起きてくる人もいない…聞こえて来るのは、風の音・虫の声。

見えるのは、月明かりといっぱいの星明かり。

何がいいのかとかなんて分からずに、ただボーッと空を見上げた。

(いきなり親が来て…ケンカして、いろいろあったなぁ。)

空に光る星を見て、今日のコトをあれこれと考えていた。

そんな時。


「眠れないのか?」と声がして、オレは草の絨毯から起き上がった。

そして、周りをキョロキョロ見回すと

家の戸口のすぐ近くに父さんが立っていた。


「父さん…父さんも眠れない訳?」と真剣に聞き返すと

「お前のコト、忘れてた。」と言い出すロリス。

「は?オレのコト??(・・?」何のことかさっぱり分からなかった。

「そう…忘れてた。」と言ってオレのところまで歩いてくる父さん。

オレはやっぱりよく分からずに、考え込んでいた。


父さんがオレの前までやって来た。

(忘れていたコトって、何だろう?)

と思っていると、いきなりぎゅっと抱きしめられた。


(はぁ?!煤i ̄□ ̄;))とますます困惑するクーリエ。

(一体父さんは、何が言いたいんだ?(−−;))と思っていると

「ゴメンな。」と父さんは、いきなり謝りだした。

「何で父さんが謝るのさ、分かんないよ。」と言い返すクーリエ。

「思えば、お前には一切甘やかしたコトは、なかったな。

そして、お前もまた甘えるコトが少なかった。

お前が遠慮していたのか、それとも厳しい現実を見据えていたからなのか

それは分からない。」と言う父さん。


無理もない。オレ自身もよく分からなかったのだから。
でも、甘えるのがまるで悪いことのように感じていたのは、事実かもしれない。

黙っているオレに

「オレがお前の妹や弟を作ったのは、お前が寂しくないようにする為だ。

だが…。」

と言いよどんだ父さんは、オレの顔を見て

「疲れている顔だ。」と言われて、何となく動揺した。

疲れるようなことは、やってない。
むしろ、4人で語らって楽しい時間を過ごしているはずなのに。

こころの中で、そう否定していた。


「お前は、幼い頃からそうだったな。遠慮・妥協し、自分にウソをつく。

譲る・あんまり主張しない。何故、周りを気にするんだ?」

「周りの人が、仲間が…大切だからだよ。」と言うオレに

「それがお前の甘いトコだ。周りの連中や兄弟を甘やかしているな?

もっと周りを頼れ!信頼して、そして、甘えろ。

お前が思っている程、現実は厳しくなんかないんだ。」

と言う父親の言葉は厳しく感じた。


「違う…甘やかしてなんかいない。」と言うオレ。

けど…いつの間にか泣いていて。

「全く。相手のコトを容認するだけの許容量がぶっ壊れているのに

精神的に負荷かけてんじゃねぇ。お前は、まだ子供だ。(−−;」

とあきれ返った顔の父さんにしがみついて泣いてるオレがいた。


何でだろう?泣く気は、なかったのに…。

きっと考えないようにしていたことが、オレの中で苦しくなっていたんだ。

兄弟・友人関係…。その中で日々起こるゴタゴタ。

オレは一人だと思ってた時に出会った長女のラファンとの遭遇。

今の人間関係…自分自身どうすればいいのか分からない不安。

この世界から居なくなってしまう人に対する不安。

全てを飲み込もうとして…全てのことに関する感情を排除することで

押さえ込んでいたんだ。平気なフリをし続けていたんだ。


オレは…泣いた後になって気分が軽くなった気がした。

父さんと喋ることでオレは『容認』されたんだと安心した途端に

気が緩んだのかもしれない。

いづれにせよ、『オレ』の心は、幾分か軽くなっていた。


「さあて。バカ息子の気分も落ち着いたようだし、寝るとするか。

お前もさっさと寝ろよ。」

とロリスは、クーリエのツンツン頭をクシャッと撫でると家の中に入った。

「ふわぁぁぁ。オレもそろそろ寝るかヽ(>Q<」

とクーリエも草の絨毯から立ち上がると家の中へと入って行った。

三日月が、優しい光でミルレスの町を照らしていた。