Y 「汚いところだが気にせず腰をおろして下され」 その言葉に、レットがどかっと腰を下ろし、 それに続くように3人も腰を下ろす。 間もなく4人の下にスープが運ばれてきた。 「ヒヒ、上手そうだな。 じゃ、バルじいさん遠慮なく頂くぜ」 と、レットは軽く礼を言い豪快にスープを飲み始めた。 それに続きエルヴィスたちもスープをすする。 カーウェンは、スープの中に入っている ザドにたじろぎながらも 恐る恐るスープを口に持っていった。 「今回は、先日の事が心配で様子を見に来ただけかの。 その格好を見れば、それだけではなさそうじゃの」 長老は、美味しそうにザドにかぶりついているレッドに 微笑みながらも話を切り出した。 レットは食べるのをやめ、頭を掻きながら話を始めた。 「実はよ―――――」 事の顛末を聞いた長老の顔から笑みが消え厳しい表情になる。 「ふむ、聖地にそのようなモンスターが居たと言うのか。 あそこはわしらにとっても 聖地であり訪れてはならぬと 言われている場所。 わしも初めて聞く話じゃよ。 わしが行くなと言ってもおぬしらはどうせ行くのじゃろう。 そうすればフェリカプリコ族やヤモンク族と争うのは必至。 あやつらも先日人間どもと争ったばかりじゃし、 気もたっておろう。 話し合いはまず無理じゃな・・・」 「そうなんだよなあ。 だからじいさん、あんたなら何か知っていると思ってな。 俺たちがこわーいカプリコに殺されるのなんて 夢見悪いだろ?」 レットは重苦しい雰囲気の長老とは違い、 大変軽い口調で話す。 まるでエルヴィスたちと話しているかのようであった。 エルヴィスは思わず苦笑する。 「クク、レット殿は変わらぬな。 よし、その件はこの爺に任せてもらおう。 バハはいるか」 長老の顔から思わず笑みが現れ、 バハと呼ばれたカプリコが現れた。 「バハよ、この人間たちを聖地の抜け道までの道案内をしてくれ。 頼んだぞ」 「それでこそ、バルじいさん!」 レットは、笑いながら長老の肩をバシバシと叩く。 仮にも長老なんだから・・・と エルヴィスは、少し冷や冷やした。 「イタタ・・・。 年よりなんじゃから優しく扱かっておくれ」 長老は構わず笑っている。 レットの魅力は誰に対しても対等に扱うことだ、と 昔フィスティナはエルヴィスからそう聞いたことがあった。 誰に対しても媚びる事はしないが、 誰に対しても蔑む事もしない。 その通りだなと、フィスティナは笑った。 「出発前にスープのおかわりはいかがかな?」 長老の言葉に、レットは喜んで皿を出したが カーウェンは顔が引きつっていた。
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