Ancient memory 第九部 \ \ マモが倒れ絶望的かと思われたその時、ミルレスの街中に黒いローブを着た女性が3人現れた。 空間が歪んで見えたことからウィザードゲートだろう。 今それを使える者はスオミには少ない、ならば・・・ 「あ、セルシアさんが言ってた・・・」 「魔女か!」 魔女に気づいたトールが殺意を隠すことなく対峙する。 「アルケミーが急いで来たと思ったら・・・こういうことなのね」 黒い羽帽子を被った端麗な女性がため息混じりに呟く、確かセルシアの話の『ステンノ』 そしてその隣に立っている女性は恐らく『メデューサ』だろう。 その2人の後ろで怖がっている女性。 ミルレスに隠れ住んでいたのだろうか、ミルレスの服を着ている。『アルケミー』と呼ばれていた。 「やはり貴様が関係していたか・・・私はもう許さないぞ」 メデューサが右手に紅蓮の炎を纏わせ怒りを露にする。 その時、どこかで女性の悲鳴が聞こえた。 民家の中を荒らしていたルアス騎士団に抵抗し、斬りつけられたのだ。 そしてまた聞こえる、今度は小さい男の子の声。 辺りに力を持たない者たちが残酷にも斬られている。 「許さない・・・!」 「・・・!待ちなさいメデューサ!」 ステンノが慌てた様子でメデューサを抑制しようとしたが遅かった。 メデューサの体中の魔力が怒りでコントロールできず、暴走を始めたのだ。 騎士団に次々と魔法を放つ、氷柱の雷雨を落としたり、地面を爆発させたり・・・ 断末魔というのだろうか、男の叫び声があたりで聞こえる。 「うあああああ!」 メデューサの暴走は止まらず、一際巨大な炎の塊を上空に生み出した。 それを躊躇い無く落とす。それと同時にメデューサが突然苦しみだした。 熱波がノーディたちの元まで迫る、 それを受けたメデューサは耳が裂けそうな金切り声を上げて閃光のように一瞬光った。 メデューサはもう、彼女ではなくなっていた。 皮膚が魚の鱗のようになり、 髪が前のように艶やかな黒髪ではなく蛇のようにうごめいていた。 目は完全に見開いており焦点も合っていない。 「みんな、下がって!」 ステンノが前に出る、確かにこの状態でまともに落ち着いている人はステンノだけであった。 メデューサが雄叫びを上げる。それは獅子のように、マイソシア全てに響くのではないかというほどの。 そして、苦しそうに、霧散した・・・ その姿は泣いているかのようにテイルは見えた。 ルアスに地震が起きた。 石畳のルアスの地面は巨大な地震の影響で次々に捲れ、砕けていく。 地下水道さえも壊れ、次々と水が漏れていく。 捲れた地面は土で水が浸水した。地割れも起きていた地面に水が染み込むと・・・ 地面が砂のようにあっけなく崩れる。 人々は何が起きたのかわからぬまま転び、泣き叫び、家族と離れ離れになった・・・ スオミの町でそこら中に火柱が立った。 ここは不思議な現象が日常茶飯事のように起こるが破壊的なことは全く無い。 しかもここは湖の上に位置する町、火柱が立つことなどありえないのだ。 火柱はやがて竜巻のようにスオミ中を駆けた。 スオミの森の方で、強大な魔力が流れてきたとスオミの魔術師は後に語った。 そちらの方角にあるのはスオミダンジョン、何が起きたのか・・・ 「どうなってるんだよ・・・」 ノーディが泣きそうな声で誰かに問う。 答えられる者は、いなかった。 ミルレス中の木々の葉が、ほとんど枯れてしまっていた・・・ Ancient memory 第九部 完