Ancient memory 第八部 「トルコ石」後編


「トルコ石」



後編


「私はね・・・」
「ん?どうしたフィール」

酒場を出て宿へ向かう途中背負ってもらっていたフィールが唐突に口を開く。
その顔は思いつめた表情であった。

「私たち聖職者はむやみに命を奪うことは嫌っているの」
「知ってる、俺が勝手な狩りをやめたのもそれだからな」
「尊い命は守る、でも邪悪な命は裁くのが聖職者なの」
「それも知ってる」
「ポンは・・・邪悪な命なのかな。今は人を襲っているけど昔はみんなと仲良くしてたんでしょ?」
「・・・何が言いたいんだ?」
「でも作られた命、私たち人間が勝手に作った命。
本来守らなきゃいけないのに・・・自分で作って奪うなんて」
「やめろ・・・それ以上は話さないでくれ」
「うん・・・ごめん」

ポンは古代の魔術師が作った命、それはポン自身が望んだモノではないはずだ。
勝手に生み出されて、殺されて、ポンは怒りを感じているのではないだろうか。


「気をつけて行ってきてね」
「大丈夫だ、昔から知ってる奴に殺されるワケがない」

二日酔いでトルコ石集めに行けないフィールは家で待つことにした。
彼女もやろうとしていることはあった、だからちょうどいいのかもしれない。



「ファイアアロー・・・」

炎の矢がポンを爆散させる、そして飛び散った後にはトルコ石が残されていた。

「何個集めればいいんだ?」
「数個でいいって話だけど・・・まぁ1個でもいいんじゃねぇ?」
「そうか・・・」

プーレの言葉は、あと何匹殺さなくてはいけないんだ?と聞いているようだった。
彼は考えていた。
何故カプリコはこんな遠い町までやってきた?
何故ポンたちは人間を襲う?
何故ポポなどの上の奴らは出てこない?

カプリコは自分たちで砦を持ち、まずほとんどと言っていいほどそこから出ない。
今まで実際に出ていないのだから今回のケースは珍しいより変なのだ。
ポンたちは水が汚れたくらいで人間を襲うようになるのだろうか。
それほど弱い種族なのだと言えばそこで終わるが・・・
いままで仲良くしていたのは偽の心だったというのか。
そして何故上級ポンは出てこないのか。
これは・・・何か企んでいるようにしか思えないのだ・・・



「すまん、俺先に帰る・・・」
「あぁ、今のお前じゃ足手纏いにしかならねぇ。ちょっと頭冷やして来い」

プーレは、一足早く帰って行った。
そしてマークは・・・後ろのポンの集団の方に体を向けた。

「これが本当のポンだなんてな、アイツには言えない・・・か」




「フィール、どういうことだ?」
「もう一度言うわ。ここの図書館で調べたらポンを作った魔術師のことについて書かれてあったの」



そのポンを作った魔術師はとても強大な力を持ち、そして悪に心を染めていたのだ。
その心は他の人間を躊躇い無く殺せるほどに。

その心は作ったポンにまで移り、とても凶暴な魔法生物になったという。
その大量のポンを抑えるため、人間は一つの手段をとった。
ポンたちが発生する水にトルコ石のカケラを混ぜていたのだ。
少しずつ、バレないように。
水を綺麗にするトルコ石はポンにも影響を及ぼしポンは大人しい生物になった。
人間にしてはとても平和的な終わり方だった・・・のだが。
ポンを作り出した魔術師は処刑されることになる。
その魔術師は最後の力で2つ残したものがある。
一つは全てのポンの本当の心をもっとひどく悪に染めること。
それはトルコ石の効果により表に出ることはなかった。
もう一つはあるポンに自分の精神を移したこと・・・
そしてそのポンは今でもつかまっていないらしい・・・



「つまり全てのポンはもとから悪だったってことよ。
そして今のポンは本当の姿、私たちを殺す殺戮生物なの」
「今のポンは・・・数千年前の計画だったってことか・・・
クソッ!フィール!ここで大人しくしてろ!」

プーレはマークの元へ走り出す、
もし魔術師の精神を取り込んだポンに会ってしまったら・・・どうしようもないかもしれない。






その頃マークは上級階級のポンたちに囲まれていた。
そしてある光景を見てしまう。
他のポンポンよりも明らかに違う・・・ポンの王とも呼べるような風格のポンが・・・
カプリコたちを連れて先導するようにスオミに向かっていた。



そしてまた、3ヶ月前と同じことが起きる・・・・