Ancient memory 第八部 「トルコ石」前編


「トルコ石」


前編


「へぇ、なかなかいい所じゃない」
「だろ〜?俺の故郷なんだぜ」

左手の薬指に眩いほどの高価な指輪をつけた男女がスオミの真ん中に現れる。
まあ、こんなことは魔術師にしてみれば造作もないことだ。

「あれ、お前マークじゃねぇ?」
「おぉー!!久しぶりだなプー太郎!」
「その呼び方はやめろ、俺はプーレだ!!」
「まぁまぁいいじゃねぇか。で、そちらのベッピンさんはどなただい?」
「俺の妻だ!」
「こんにちは、フィールと申します」
「何っ!?お前が俺より早く結婚するなんて・・・しかも超美人・・・ちくしょ〜・・・今日は飲むぞ!」
「(人の話聞いてるのか・・・?)俺も付き合うぜ!」
「当たり前だ、お前が来なくて誰と飲めってんだ」
「少なくとも女性とじゃあないな」



スオミの宿屋と連結する酒場で2人の男が大騒ぎ、その連れの女性は眠っていた。
女性の方は聖職者だからと飲むのを拒んでいたが結局は泥酔して今の状態だ。
そして2人のうちの1人がこんなことを言った。

「お前のいなかった2年間いろいろあったんだからなぁ〜」
「女にフラれたり女にフラれたりか?」
「まあそんなことも無かったワケじゃないが・・・いや本当の事件でさ、今でも続いてるんだよ」
「ほぅ、面白そうじゃねぇか。ちょっと話してみろ」
「あぁ・・・3ヶ月前のことなんだが・・・」


━3ヶ月前━

ここ水の町スオミ周辺の森にはポンという古代の魔術師が生み出した水の魔法生物がいる。
ポンには多くの種類がある。下から
ポン ポンゼキ チェストポン ポンナイト ポポ ポンポン
と階級を作るほど知能を持つ生物だ。
一番低いポンが魔術師の作った生物と一番近い姿をしているといわれるが・・・定かではない。

いつもはとてもおとなしく、ポンにいたってはときどき人間と遊んでいるぐらいである。
そこに・・・カプリコの集団が現れた。
体を洗うのを嫌うカプリコたちはスオミの水をどんどん汚していった。
熟練の魔術師によって追い返したがスオミの水は取り返しのつかない状態になっていた。
そして水の影響を一番受けたポンたちは・・・



「どうなったんだ?」
「今の状態さ、ちょっと森に入っただけで死者が出る」
「そりゃすごい変化だな・・・俺は昔ポン飼いたかったくらいなのに・・・」
「そして今世界中からトルコ石を集めているんだ」
「はぁ?関係無いじゃねぇか」
「ところがそうでもないんだな」




ポンたちが何千年もの間ここまで汚れなかったのにはある道具が鍵となっていた。
それはトルコ石。
トルコ石には水を綺麗にする魔力が込められており、それがポンの体には埋め込まれていた。
だから多少水が汚くなってもポンは正常でいられたのだ。
今狂っているポンはトルコ石を失っているのかもしれない。
汚れたポンは人を襲うようになっていた・・・



「で、まだ水は綺麗にならないのか?」
「あぁ、まだ必要だ。仕方ないから少しポンに分けてもらおうかと思っている」
「正常なヤツも殺すのか・・・」
「仕方ないだろう、俺も明日少しとってくるんだ」
「チッ、ポンにはいい思い出しかないのにな・・・
恩を仇で返すってのはこういうことか・・・俺も行こう」



後編へ・・・・・