Ancient memory 第七部 T


T


「なぁ、なんで海に出るんだ?」
「海だ海だ〜、キレイー」
「なぁ・・・おい・・・」

深い闇の森を通り抜け、目的地のモンスターの街「サラセン」についた・・・
かと思った。が、着いたのは一面金色の砂浜と彼方まで続く水平線。
マモはノーディに問われているがわざと無視しているかのようにタバコを吸い始めている。

「おい、マリモ!道間違えたんじゃないだろうな!」
「マ、マリモだと!?ワシの髪を馬鹿にするな!」

確かにマモの髪は濃い緑色をしていて、それでいて長めに伸びているのでマリモ。
とも見えなくはない。

「とりあえず、だ。サラセンへの道を聞こう。それにもしかするとテルがいるかもしれないだろ?」
「珍しくポジティブシンキンじゃねぇかマリモさんよ・・・」
「広いな大きいな〜」

遠い水平線を見つめながらどこかで聞いたような歌を唄うユウにノーディが出発を促す。

「ホラ行くぞユウ」
「ぇー、あたしもうちょっと海見てたいな・・・」
「2人とも今の事態わかってる?ねぇ、わかってる?」

日が沈むまで時間はそんなに無い、早々に諦めてノーディは足を動かした。
勿論ユウを置いて。



「デケェ像・・・」

話せる相手を探していたのだが見つけたのは大きな像。
高さが大体10メートルといったところか、それに何故か
何故か、動いている。
うねうねと左右に気味悪いほど動いている。

「気持ち悪ぃなぁ・・・ん・・・?何だこの声」
「・・・ララ・・・ラ・・・ラララ・・・ラララー」

像に見とれている間にいつの間にか聞こえてきた声。
汚くはないが美しくも無い。
言ってしまえばいい声なのだが下手なのだろう。
ヤシの木の間を潜り抜けてきたのは青いサンバシャツにギターを持ち、
大きな麦藁帽子を被った気味の悪いモンスターだった。

「ここは気味悪いヤツしかいないと見た」

確かに店番をする猿やカニ、喋る箱などは見て気持ちのいいモノではなかった。

「ラララ失礼な!わたしはアミゴ、ルケシオンのラララ唄う銀行員〜」
「仕事しろ、と言いたいところだが・・・短い金髪の聖職者を見なかったか?」
「ラララ見たさ見たさ〜、金髪少女は小島へ〜ラララ行った行った行った〜」

情報提供は大変嬉しい、だが意味不明な歌を途中に挟まれてはイライラする。
注意と警告を入り混ぜて質問をする。

「とりあえず唄うのをやめろ。それ、何日前だ?」
「多分ラララ3日前〜、ラララ!ラララ!ララがふっ!」

両手をあげて雄たけびのように唄いだしたとき、アミゴの腹にノーディの拳がめり込んだ。



「何だか来てたらしいぞ・・・」
「ぉー、ちょうどよかったね」

普通こんな偶然は在りえないのだがユウは気楽に相槌を打つ。
だが砂浜に座っていたユウの隣に座り込むノーディの顔は明るくなかった。
会える、嬉しい。分かる、安心する。
ノーディは友人と呼べる人物が少なかった。
もしかすると今探しているテイルと、一緒にいるユウとマモくらいかもしれない。
ミルレスからの盗賊として異端児扱いされ、同じ年頃の青年たちと遊ぶことはなかった。
それを気にせず、一緒にいてくれた三人。
もっともマモはもともと相手を倒すことに躊躇いはなかったが・・・
それでも。嬉しかった、楽しかった。

お世辞にも頼もしいとは言えないその三人をノーディは冷静に、しかし共に楽しみながら見つめてきた。
自分を理解してくれる友を失いたくない。
その点ではある意味仲間を守りたいジェイスと似ているのかもしれない。
彼は少し頼もしくないリーダーだった。

それ故、気持ちが爆発してしまったのだろう。


「お前たちのせいで!」


Hunting result
失いたくない
『臆病』