Ancient memory 第五部 T


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「そうだ、お前らここに来る途中デカいカニに出くわさなかったか?」
「カニ・・・会ったな、クソバカデカいカニにな」
「そうなんだよなぁ、最近モンスターどもの動きが変でな、生態も変化してるってウチの学者が言ってるよ」
「海賊にも学者なんてマジメな人がいるんスねぇ」
「今爽やかに馬鹿にしなかったか?」

迎えの船が着き、それに乗り込み小島へと渡る途中で先ほどのカニについての話題が盛り上がっていた。
海賊たちがてこずっていたようで退治してもらえて手間が省けたとドレイクが言う。
セルシアたちにとってはカニよりドロイカンたちの方が強敵だったのだが。

「ほーぅ、あの竜を。お前等並大抵のレベルじゃねぇな、何の旅してるのか聞かせてくれないか?」
「今は古代の記憶を探す旅をしているわ」
「そんでこの小島なんかに古代の記憶とやらがあるのか?」
「あわよくば奪っていこうとでも思ってかもしれないな」
「そりゃ面白ぇ、やってみろよと言いたいところだがアジトには宝も何もねぇさ。船長と一緒に消えちまった」
「(俺が全部盗ったしな・・・)」
「ま、あると言っちゃ宝箱だけだ。記念に見ていけよ」

確かに金銀財宝など一般的にいう金目のモノは全て少し前に盗っていった。
だからといってこのまま帰るのも癪だということでその宝箱とやらを見ていくことにした。
ドレイクはこう言っていた。
『カラッポだけど恐ろしく大きなモノが入っている』



小島につき、物珍しそうに集まってくる海賊たちをドレイクが手で制する。
やはり海賊の中では権力的に強い者なようで海賊たちは大人しく下がっていった。
道が開けた先には一つの宝箱が無造作に落ちていた。

「不思議な箱ですねぇ・・・」
「うむ、黄金に包まれているが不思議な気配がするな」
「この宝箱は俺たちの中ではミミックって呼ばれてる、開けた者は・・・全員廃人になっちまった
できることなら海に沈めちまいたいんだが引いても押しても動かねぇんだ」

ミミックを開け、中にある何かを見た者は目も口も顔も虚ろになり、
何も食べずにそのまま死んでしまうらしい。

そして中身を見た者は何か不思議な巻物を持っていて、死んでしまうと同時に消えていってしまう
他の者はその巻物には触れられなく、無理に触れようとすると電撃を発して接触を拒まれるというのだ。

「面白そうじゃない、その巻物っていうの是非とも見てみたいわね」
「だからな、ミミックの中を見て生き残ってるヤツがいなくて巻物が見せられないんだ」
「だからね、ミミックの中を見て生き残ればいいのよ」

ドレイクが口を開けたまま喋らなくなる、少し間を開けて一気に喋りだす。

「あの巻物が古代のものとは限らないんだぞ?もしお前らがミミックの中を見て廃人になっちまったら
それで全部パーだ、俺としても後味悪いしお前らも死にたくねぇだろ?やめとけって!」

一息で喋ったので息切れして少し咳き込む、それを見ていたセルシアは静かにこう答える。

「この木、ミミックの隣に生えている木は古代メント文明に滅んだ木よ」
「それがどうしたっていうんだ?」
「その木に寿命はなくてね、
他の植物や生物から栄養分を奪って生きるのよ。その証拠に周りの地面も死んでいる」

意味がわからない言葉を続けるセルシアにドレイクを含める5人は黙って彼女を見つめる。

「ミミックは古代から開けることのできない生物ね?死体も怖くて触れることができなかったみたい
多量の骸骨が転がっている、この木が全て吸い取ったのよ」
「なんでそんなことを・・・」
「ジェイス、カチダガー貸して」
「お、おう」

腰につけたカチダガーを投げ渡す。
手を斬ることなく取っ手でキャッチしたセルシアがまた話し出す。

「これは古代の記憶を持つ短剣、これに触れた途端私に多くのメントの記憶が流れ込んできたわ。
今の木の話もこの短剣が知っていた」
「・・・ウソじゃねぇな、その目」

セルシアの目は透き通っていた、まるで向こう側まで見えてしまうくらい淀みなく。

「それに、死ぬのが怖くてハンターなんてしてないわよ」
「んで、仲間を置いて危険なとこに行くのか?」

カチダガーを奪うようにジェイスが取り上げる、そしてセルシアの肩に手を置きこういった。

「俺もいくぜ、あの誓いは冗談じゃねぇんだ」
「だからって俺ッチも置いてくわけじゃないッスよね?」
「あたしもいきますよっ!逃げてちゃ仲間なんかじゃないですから」
「オレも行く、としか答えさせてくれないだろうしな」
「・・・ま、こういうワケよ」

ドレイクは何も言わず首を縦に振る。
しかし最後にこう言った。

「お前らの亡骸を片付けることはないだろうよ、気をつけて行け」

5人が手を合わせてミミックの口を開ける。
その中には黒い、ただ黒く重い色が永遠に続いていた。

Hunting result
ミミックを開ける鍵
『?』