Ancient memory 第四部 T


第四部 『これから』

T

顔を包む空気が冷たいのに気がつき目が覚めた。
どうやら橋の上で眠ってしまっていたようだ。
体は冷えていないかと起き上がってみたら見慣れたマントがかけてあった。
ジェイスが羽織っていた淡く蒼いマントだ。

そして本人はとなりで大きなくしゃみをしながら眠っていた。
マントをかけ、小声でありがとうと言い、テイルの家の方へ向かう。

彼女は聞こえなかったかもしれないが、おう。と短いが全てを認めてくれる返事が聞こえた。


テイルの家のドアを開けようとしたとき、どこからか力強い声が聞こえた。

「ふんっ!ふんっ!ふんっ!」

聞こえる方を見るとガイがテイルの家の前の大木の枝にぶら下がり、片手で懸垂を繰り返していた。

「朝から特訓?真面目ね」
「ああ、ふんっ!おはよう、ふんっ!」
「話すときくらいやめなさいよ」
「そうか、ふんっ!今度から、ふんっ!気をつけよう、ふんっ!」

これ以上話しても仕方ないと悟り、家に入る。

「2人とも起きてるわね、おはよう」
「あ、おはようございますぅー」
「あー姉さん、おはよーッス。あいだぁ!」
「ラスアさん大丈夫ですかぁ?」

どうやら珍しく料理を手伝っているみたいで、何かを切っているのだろう。

「もうちょっとで朝ごはんできますからガイさんとジェイスさん呼んできてもらえますかぁ?」
「いいわよ、それじゃお料理頑張ってね」

あいだっ!との声は今度こそ彼女も聞こえた。



「そういえばこれからのこと、全然決めてませんでしたねぇ」
「そうッスねぇ・・・やっぱり古代のアイテムはダンジョンにしか無いんスかね」
「その前にさ、ガイの自己紹介してないじゃないの」
「そういえばそれもそうだな、ダーハッハ!」

やっぱり変わってないのかもしれない。
頭を抱えながらもガイの自己紹介を聞いた。

「オレはガイ、ガイ・ストレイだ。ジェイスとは幼い頃からの友人でな
今回の王宮資料奪取作戦も頼まれてやっていたんだ」
「じゃあ古代のアイテム収集には同行しないんスか?」
「いや、ジェイスの話を聞いたときから面白そうだと思っていてな
できたらオレも共に旅をさせてくれないか?」

誰が意義を唱えるまでもなく、ガイを快く受け入れた。


「ラスアが言ったみたいに古代のアイテムはダンジョンにしかないのかな」
「まぁありそうな場所を言ってみましょうよ、先ず数日前に潜ったサラセンダンジョン」
「俺ッチの故郷の近くにもダンジョンがあったッスね」
「オレはノカンの集落の奥にも洞窟があると聞いたな」
「その3つですかねぇ」
「いや、待て。もう一つあるぜ」
「あら?まだあったかしら」
「ルケシオンの海賊アジト、2ヶ月くらい前のあの場所だな」

そう、船長と激戦を繰り広げたあの場所だ。
確かにコマリクという強大な魔力を込めたアイテムがあったのだ
他にもあってもおかしくはないだろう。

「サラセンダンジョンは多分クリングルがかなりピリピリしてるだろうな」
「スオミは・・・ちょっとワケあって行きたくないッス・・・」
「ノカンごときでは修練にならんな」
「みんな勝手ねぇ・・・じゃあ少し気が引けるけど海賊アジトに向かいましょう」
「そういえば何か嫌なことでもあったんですかぁ?」
「いや、別になんでもないわ・・・」
「それならいいんですけど・・・」

あの激戦からもう2ヶ月、今度は何が待っているのか。
古代のアイテムへの期待の気持ちと、あの眩暈がするような光景が恐ろしい気持ち。
そういえばあの日も二つの気持ちに挟まれていたな、と懐かしい想いを蘇らせる。
今度こそ、何も無いだろう。そう自分に言い聞かせた。
そうでないと、恐怖に取り込まれてしまいそうだから。

Hunting result
希望としての見るべき道
『目標』

これからはHunting resultに少し言葉を入れていきます。
セルシアたちが得たものは必ずしも物質のみではありません。
かけがえの無い仲間が最高のトレジャー、そう思っていてください。