Ancient memory 第二部 T


1 サラセンダンジョンへ
T

「なんだこりゃ・・・」

赤い長髪を後ろへ、白いヘアベンドで押さえた盗賊の男が何か大きなモノを指差して言う。
そちらの方は少し薄暗いが見えなくもないくらいだ。
するとそこには男の2倍近くある肉のカタマリのようなモンスターが大勢いびきをあげて眠っていた。

「あ、こりゃ[バギ]ッスね。モンスターにしては大人しいらしいスよん」
「ラスアはコイツ等を知っているのか?」
「俺ッチ・・・これでもスオミ魔法研究大学首席で卒業したんスよ?」
「人は見かけによらないモノだな」

ラスアと呼ばれた男は、淡く青い長めの髪を揺らしながら学生時代のことを語る。
勿論、旅の仲間が聞いているはずがない。

「ジェイスの兄貴、聞いてるんスか?」
「あぁ、聞いてるよ。昨日見たの夢の話だろ?」
「あっ・・・そこまで言いますか兄貴・・・」

ジェイスとは先ほどの赤い長髪の盗賊の男だ。
仲間たちの中で一番背が高く。そして一番力が強いと見られる。
しかしその大きなジェイスでさえバギの前では大人と子供の違いがある。

「二人とも騒がしいわよ、ラスア。コイツ等は大人しいと言ったわね」
「あ、その通りッスよ姉サン」
「セルシア。コイツ適当なこと言ってるかもしれないぜ?」
「兄貴ぃ・・・友達失くしますよー」

そして3人目の仲間、セルシア。
長い銀髪が後ろで少しハネた髪型をした盗賊。
何故盗賊をしているのか疑問に思うほど美人でもあった。

「大人しいなら刺激する必要は無いわ、ここのフロアは早く抜けましょ」
「はーい、姉サーン」
「りょーかいっ」

気の抜けるような返事が、二つ返ってきた。






私の名はセルシア。
「エンシェントハンター」だ。
あまり世間には広がっていない、そしてこのハンターもほとんどいない。
だからなったのだろう。誰も知らない記憶を、この手で、確かめたかった。

「エンシェントハンター」とは古代の記憶を追い求めるハンターのことだ。
つい最近まで私はトレジャーの方にしか興味は無かったのだけれど・・・


ある事件から私のエンシェントハントは始まった。
その事件の日の夜、ルアスの宿を抜け出し・・・
そして古代の記憶を探すためにサラセンへ向かった。



夜の森を駆け抜ける、途中の敵を蹴散らして。

このあたりのモンスターの特徴はわかっていた。
一つ目のモンスター、モンブリングをベースにした体が少し変わっているだけ。

弱点は勿論その大きな目。
それを失えば何も出来ないのだから。

躊躇い無く人の手のようなモンスターの中心にある一つ目を突き刺す。
血は出ない、代わりに怪しい黄色い光が目玉の傷から吹き出てくる。
そしてその手が動かなくなったとき気づいた。

「この辺は一通り殲滅したわね・・・」
「ゼェ・・・ゼェ・・・」

後ろから声が聞こえる。
声にならない声で私の名前を呼んでいた。

「セルシアァ・・・」
「足速すぎッスよー・・・」
「ん、そう?」

どうやら置いて行ってしまったようで・・・
私も足には自信があったので悪い気はしなかったが。
モンブリングが持っていたのだろう、妙なチケットを拾いあげながら二人を待つ。



結局歩くことにした。

「うん、やっぱ歩くのが一番だよな」

ジェイスがポケットに手を突っ込みながら呟く。

「ですよねー、姉サンは足速すぎるんスよ。あぁ、あの魔女のホウキが欲しい・・・」

ラスアが遠くにいる魔女[ミスティ]が乗っているホウキを物欲しそうな目で見つめる。

「無駄口叩くのなら置いていくわよ」

なんだか私だけマシなのか、それとも私だけ普通じゃないのか。

その後も無駄口、というか雑談は続けながら森の出口を目指し足を進めた。
途中転がるカボチャに襲われたが。

Hunting result
『どこかのチケット』