アスガルド物語〜序章〜その11


カプリコ砦の死体の山の中、二人の男が戦っていた。

人間とカプリコ、ほとんど無傷のカプリコに対し、
人間の男はいつ死んでもおかしくないくらい血を流している。

「お前、目が見えないのか。」声を絞り出す麗春。

喋るのも辛かったが、聞かずにはいられなかった。

「いかにも…」深くゆっくりとした声だ。

麗春は心の中で笑った。笑わずにはいられなかった。

まさか、目の見えない奴にここまでやられるとは。
俺の実力もたかが知れてるな。

「蔑む必要はない…お前はよく戦った…」心を見透かしたように喋る。

「うぬの名は…」

「はっ!ふざけるな!騎士道精神のつもりか?
俺はまだ負けるつもりはない!」

「よかろう…名も無き戦士よ…礼を尽くし、我が奥義で葬ろう…」

「ちなみに盗賊だ。」

麗春の言葉はエイアグには届いていなかった。
大剣が揺らめいて見える。出血のせいかと思ったがどうやらちがった。
凄まじい熱気。

ブァァァァッ!!

轟音とともにエイアグの大剣に螺旋の炎が走る。

「フレイムスラッシュか!」

「参る…」一気に間合いを詰め上段から振り下ろす。

炎に焼かれながらも、なんとか身をかわす麗春。
火炎が地面に達した瞬間、炎は放射状に広がり麗春の下半身を焼く。

その時!振り下ろされた切先が切り返される!

「なっ!」激痛とともに意識を失う麗春

「飛燕焔返し…」崩れ落ちる麗春の横で呟いた。





薄暗い部屋の中に二人の人影があった。

一人はエイアグ、カプリコ三騎士の一人。
もう一人は、部屋の一番暗い所にたっていた。

「何故、とどめを刺さなかったのですか?」

「……奴は強くなる…殺すには惜しい…」

「そうですか、まぁ構いませんよ。私も彼には興味があります。」

寛麗鳳の弟にはね…