誰も知らない・・・


「そこで何しているんですか、おじさん。」

「ん・・・おじさんとは心外だな。
 お兄さんだろ。お・に・い・さ・ん。」

「じゃお兄さんはここで何しているんですか?」

「ここが好きなんだ。
 ・・・君こそなんでここにいるのかな?」

「・・・僕は、ここで死のうと思うんです。」

「ほぉ・・・」

「ほぉって、普通止めるでしょう。」

「なんだい、止めて欲しいのかい?」

「・・・・・・」

「でも、ここではやめてくれよ。
 この綺麗さがなくなってしまう。」

「じゃ、どこで死ねって言うんですか?」

「・・・さぁ」

「さぁって・・・」

「私は知らないよ。君がどこで死のうと。」

「ひどい言い方ですね。」

「私と君とは赤の他人だろ。」

「・・・・・・」

「さて、しんみりしてきた。
 こういう雰囲気は嫌いだな。」

「・・・理由くらい聞いてくださいよ・・・」

「ん?じゃ私はただここにいるだけだ。
 勝手に君がしゃべりたまえ。」

「じゃ、勝手にしゃべらせていただきます。」

 

「僕は必要されていないんです。
 僕の家族はルアスで結構有名な家柄で、僕はその末っ子なんですが

 スオミで生まれ育ったせいか、戦士に向かないんです。
 魔に向いているみたいで・・・
 だから、死んで生まれ変わろうと・・・」

 

「・・・・・・さて
 赤の他人のお兄さんの独り言だ。

 すべての人に会って無いのに
 必要ないとは言い切れないものだよ。」

「変な理屈ですね。」

「そうか?」

「・・・・・・」

「さて、私は行くかな・・・」

 

 

「待ってください!!」

「ん?」

「僕を弟子にしてください!!」

 

 

誰も知らないスオミの高台に一つの墓標があった。

しかし、そこからの風景は誰もが息をのむものだった。

ここである一人の少年が運命を変えられたとは

誰も知らない。

 

 

墓標の前に置かれた一つの手紙。

最後に書き加えられた文字。

 

 

  師匠・・・あなたの弟子になれてよかった。