I WISH ・・・ 最後の戦い〜誓い〜


ここに今、レヴン、クレイ、レイツァーの3人と、王ガルフラントが対峙する。

「ククク… 汚らわしい亡霊が二人増えたくらいで、何か変わるとでもいうのか?」
不敵な笑みを浮かべ、王は宙を浮いている。

対峙している三人に、痛いほどのプレッシャーが襲い掛かっている。

レヴンは、両側の二人の友の顔をみた、あのときのまま…

昔のときのままの笑顔であった。

「レヴン。お前のその“創造の力”何故完全につかえないか、お前は気づいているか?」

「それは…多分、私達に対する負い目よね?」

「!?」

「アハハ、やっぱその顔、図星か。」

「しかし…俺のせいでふたりは・・・」
ずっと、今までレヴンの心の奥深くにある、罪悪感。

それは、二人の友を、自分のせいでうしなったこと。

「貴方が、それを背負い込むことはないのよ…、
私達が、貴方を守りたかったのだから」

「!」

「そうだ、レヴンの悪い癖だよ、何でも背負い込むんじゃないぞ」

「えぇ…、私達は、貴方が私達の名前を背負ったように、ずっと貴方を見ているわよ…」
段々、二人の姿が薄れ掛けている。消えかけているのだ。

「・・・もうそろそろ、またお別れのようだな、レヴン。」
 パァァァァ!!

淡い光を発しながら、徐々に空気中へ彼らの体は薄れていく。
もう、足は完全に消え、浮いている形になっている。

「まて…、まってくれ!二人とも…逝くな…また俺をおいていくな…」
とてもさびしそうな声…。

「フフフ、貴方には、大切な人もいる・・・
貴方の帰りを待つ人も、仲間もいるわ…だから、貴方はまだきちゃだめよ。」

「そうだ、俺達がお前を守ったように、
今度はおまえが、その人たちを守り抜くんだ!!俺達に誓え、そして守りぬけよ!」

「バイバイ…」 「さらばだ…」

彼らの姿は、完全にきえ、そして虚空から響いた声もうすれてきえていった…

「・・・わかったよ、クレイ、レイツァー! 
お前達は、俺が大切な人を守り抜くところを、しっかりみてろよ!」

「ククク…時間切れか。
何を言っていたのかしらんがまたお前一人、もう勝ち目はないぞ、深淵の闇よ」
不敵な声が響いてくる。

「…俺はもう、深淵の闇じゃない」

 フッ、

彼を取り巻いていた、闇がきえさる。

いや、殺意、そして狂気、闘気さえも・・・

「クハハハハ!! 考えたあげく、戦闘放棄か、哀れだな…、もう殺してもいいよな?」
グッ、プレッシャーを強く感じる。

邪悪な気が、今、動いた。

レヴンは目を閉じている。

なぜ…?

 
 俺の弱い心が作り出した人格、“深淵の闇”では、
  “創造の力”の力の真理はひきだせない。
    俺はこの力に負い目を感じていた。
     やはり心のそこでは、呪われた力だと憎んできたから・・・

   けど、今、またあの二人が俺といてくれる…
    今までも、そしてこれからも、俺とともに…!
     そして、俺の大切な人、この力でまもってみせる!

 …今、“深淵の闇”ではなく、レヴン=クレイツァーが、それに命じる。
     俺にその大いなる魔力を…貸し与えたまえ!
     

 さぁ…反撃の始まりだ、いこう、クレイ、レイツァー!

彼らの影が、レヴンの肩に手を置いたようにみえた。
それは幻影なのか、彼の思い込みなのかわからないが…

 ガンンンッ!!

それを瞬時にみきり、剣で受け止める。

力の拮抗が、刃を振るわせる。

 バッ!!

二人同時に後退した。

「ほぉ…これをとめるか…いつまでついてこれるかな?ククク」

 ザザザザザザザザ

空間を切り裂くような連続の斬撃がレヴンに襲い掛かる。

先ほどまでのレヴンならば、それを受け止めるなど不可能だっただろう。

しかし・・・今の彼にいっぺんの迷いも、負いを感じることもない。

ただ、揺るがぬ心があるのみ。

それを全て、手の動きのみではじいた。

 ガガガガ

激しい打ち合いが再会される。

全力を出し切り、空気を震わせ、そして空間をもさけていく。

お互いに、一歩もその場所から動かない。

お互いの間の空間がゆがんでみえる!

 バチィィィン!!

セルティアルがはじかれ、弧を描いて地面におちた。

しかし、王の右腕からは血が吹き上がっている。

「・・・ガキめ…調子に乗るなよ!」

怒りの表情を露にし、大剣“ベルセルク”をかざし、膨大な魔力を溜める。

そして、瞬時に彼の後ろへワープする。

“覇王炎”

 ブワァァアア!!

空間を埋め尽くすほどの炎が発生し、レヴンに襲い掛かる。
まさに、太陽がその場に召喚されたような…灼熱の地獄。

レヴンは、その波に飲まれていった。

「ククク…もえつきたか?」
その炎が暴れるさまをみながら、ガルフラントは高笑いを上げた。

その時!

 ザクン!!

暴れる炎が真っ二つに両断され、きえていく!

「!?」

 ブシュウウウ!!

そして、王の体にも深い太刀筋がのこされ、血が噴出す!

「グァアアアア!!」
致命傷をおい、彼はおちていく。

「…“一閃”」

炎の中から、レヴンがとびだした。

彼の放った剣は、もはや止めることのできない域までたっしている。

「・・・ただ、己のためだけに振るう力が、俺に勝てるはずもない…」

「貴様・・・」

「お前に守るものはあるのか? お前に大切なものはあるのか?
・・・俺にはそれがある。 それを守ろうという意思は、何者をも凌駕する!」

 ズガガガガガガガ!!
 
不意に強烈な魔力の波動が、王に戻っているのを感じた。

その余波は、空間が徐々に砕けていくほど強力。

「!?」

バンッ!!

レヴンはふっとばされ、壁に叩きつけられた。

「好き勝手いってくれるなガキが…、
俺は俺のために力を振るう、そしてこれは神をも凌駕する!

お前の守りたいものも、この世界に住むものも、
みんなまとめて無に帰すがよい、世界は俺だけのものだ!クハハハッハ!!」

“無の創造”!!


ガルフラントの周りの空間が、すべて吸い寄せられ、無へときえていく。
“創造の力”の全ての魔力をつかい、何もない、“無”というものを創造してゆく!

 やばい…このままでは…マジで滅びるぞ。

 バリリリリリババババ!!
激しい音を散らし、空間が割れてゆく。

 世界はこのままおわってしまうのか…?

 グザッ!!!

「なっ…、グフッ!」

ガルフラントの背中に、何かが飛来した。
なんと…セルティアルがつきささっている。

レヴンもその光景を驚いてみている、いや、ガルフラントの後ろの、その存在に。

後ろに…なにかがいる!

王のうしろの空間に、金色の光があふれる門がひらいた。

そしてその中に人影がある。
それは神々しい光をはなち、白い衣を身に纏い、人間に極めて近いもの…
いや、人間を創りし者。

神…

「ガルフラント=ザレックスよ」
頭の中に直接声が響く。

「グ…」
ガルフラントが、困惑した表情で前を見ると、めのまえにその者がたっていた。

「人が持ってはならぬ力、おまえの中にみたり…、
創造主の名において…それを封印する」

そのものの手が、ガルフラントの胸を貫通する。

「グァアアア!!」
必死にその手を払いのけようとするが、無駄な抵抗だった。

 ブワワワワワ

ガルフラントの体から、黄金の光の塊がでてきた、それを神は手で握りつぶした。
その握られた手から、黄金の粒が粉塵の如く風に舞い散った。

「グワワワ、ちくしょおお!! 」
ガルフラントは、その手から開放されると、
死に物狂いではなれて、魔法を暗唱し始めた。

「時を越える禁呪“タイムホール”」

 ビキビキビキ!!

新たに空間に裂け目がうまれ、その中にガルフラントははいあがっていった。

その光景をただ呆然と、レヴンとその仲間はみていた。

その者も、元きた門へるいていき、
その門が不意に消え、いつもの薄暗い部屋にもどった。

一瞬、そのものがレヴンに微笑みかけた気がした。