I WISH ・・・42 〜回帰〜 レヴンが、暗闇に降り立った。 ふぅ…みんなはなればなれか、急いで探さないと危険だな… 気を探って…! 彼の思考は、強烈な殺気を感じ、中断された。 「…誰だ?」 虚空の闇にむかって、彼は語りかけた。 「ふ…さすがは“深淵の闇” 気配を消してもむだか…」 闇から男が出てきた。 紅い鎧を身に纏い、とても長い剣をかまえている。 彼の体からは、凄まじい殺気がながれでている。 ち…こいつ、相当強い… 「我が名はヴァン、主の命により、貴様の命をもらいうけにきた。」 「ふ、消されるのがどっちか、わかっていっているのか?」 彼は背中から、青白く輝く、大剣“セルティアル”をとりだし、かまえた。 二人が、お互いの隙を探りながらも対峙する。 一歩も動けない… 「こないならばこちらからゆくぞ!」 男が踏み込んできた。 眼にもとまらぬ勢いで剣を振るう。 「丸見えだ!」 レヴンも剣を振るい、彼の剣をうけとめた… かのようにみえたが、刃が衝突した勢いで吹き飛ばされる。 ちぃ…なんだこの力。 壁に衝突する直前、彼は両足で壁を強く蹴り、水平に飛ぶ! そして、相手の剣をかいくぐり、懐にもぐりこむ。 “飛燕”!! そのまま地面に剣を打ちつけ、斬り返しを加速させ、上に切り上げる。 ギギギギ!! 鎧と剣がこすりあう音が響く、 「!?」 しかし、鎧には傷一つはいらない! その隙にヴァンが大きく剣を振り下ろした。 ザッ!! レヴンの胸部から血が噴出し、そのまま壁に叩きつけられた。 「ぐっ…」 なんだこいつ…強すぎるぞ… 「…失望したぜ、かってマイソシアを恐怖のどん底に突き落とした“深淵の闇” まさかこの程度だとはな。」 悲しみさえも浮かべた顔で、徐々にレヴンにちかよってくる。 「ふ、もう“深淵の闇”という名は捨てたのでね…」 剣を杖代わりに、レヴンが立ち上がる。 「だまれ!」 バシッ!! 彼の正拳が、レヴンをまた弾き飛ばした。 ズザザザ、地面を滑る。 「俺は強いものと闘いたい。 命を懸けての戦いこそ、俺に生きているよろこびを与えてくれる。 今のお前なぞ、本気を出すまでもなく、3秒でおわる…。」 「本気を出してみろ! 俺を殺してみろ! “深淵の闇”よ!」 ドクンー 自分の鼓動が強くなるのを感じる。 …今の俺では…ガルフラントどころかあいつにすら勝てないのか…? ドクン ・・・俺はこんなところで立ち止まっているわけにはいかない。 ドクン ・・・本気か…ならばみせてやろう。 ─そうだ、相手は殺せといっているんだ、ころしてやろうじゃないか! 思い出せ、あの時の力を…強さを! もう一つの声が自分の中に響いた。 カッ!! その瞬間、彼の周りに強烈な黒い光が巻き起こり、渦を巻く。 強烈なプレッシャーが空間を支配する。 ヴァンは後ろに飛びのき、その光景を見ていた。 笑みすら浮かべて… 「フ…感謝する。 おかげで忘れていた勘をとりもどした。」 眼を合わせるだけで死にそうな殺気を発し、 闇を纏った剣士の姿がそこにはあった。 この姿、そしてこの殺気、マイソシア大陸を震え上がらせた男、“深淵の闇” 「そうでなくちゃな…それでこそ俺の求める“深淵の闇”と呼ばれた男だ!」 二人とも、口元に笑みを作りながら、お互いをにらめつけている。 「いくぞ! 深淵の闇よ!」 男は長剣を両手に持ち、 先ほどの動きより数倍はやいはやさでふみこんでくる。 今まで本気じゃなかったということか。 「…遅い。」 一瞬、ヴァンは光が横を通り過ぎるのを感じた。 「ぐ…」 グシャッ!! 血が宙を舞う。 ヴァンの肩が切り刻まれ、血が噴出していた。 圧倒的な速さでレヴンは彼を切り刻んでいた。 「俺の鎧をうちやぶるとはな…ガルフラント様にいただいたものなのだが…」 「…俺の前で、もはや鎧など意味を成さない。 さぁ、殺しあおうじゃないか。」 冷たく、しかし楽しそうにレヴンがいいはなつ。 「のぞむところ!」 ヴァンの全身からオーラがはなたれていくのをみてとれる。 全身の力を極限までたかめる。 シュン!! 闇がうごいた、一瞬で加速し、眼に映らなくなる、が、 「そこか深淵!」 彼は的確に、そしてその速度にまけずと剣をふりおろす。 ガンッ!! 剣と剣が拮抗しあう。 力の余波が周りの空気を激しく振動させている。 「ぐぅううう」 ヴァンが両手で押し付けているのに対して、 レヴンは片手で軽そうに剣を構えているだけだ。 「…どうした、貴様、俺を起こしておいてまさかこの程度なのか?」 レヴンは彼の剣を大きくはじいた。 そして… 一刀剣術“千裂陣” レヴンのまわりから風がはっせいして、ヴァンをつつみこむ。 その風に触れるたびに、ヴァンの体からは血が噴出す! 否、それは風じゃない、光速の斬撃がおこす剣圧。 「ぐぁああああ!!」 ヴァンの鎧は打ち砕かれ、全身に傷が走っていく! とどめだ…“血桜”!! グシャアアアアア!! 彼の体が微塵に砕け、血が宙にまった。 まるでそれは闇の中で狂い散る桜のように…はかなく、そして綺麗に。 ピトッ ピトッ 血の雨の中で、ひとりレヴンは笑みを浮かべながら、呟いた。 「…ありがとうよ、お前のおかげでやっと戻れたぜ…」 かって、メント文明時代の最凶の狂気、“深淵の闇” 復活。