I WISH ・・・25 〜大地の鼓動〜


瞬きをする時間よりも速く、降臨した悪魔の爪はスルトを貫くだろう。

今、彼の目には迫ってくる爪が、
スローモショーンのように、はっきりと見えている。

 ・・・今だ!!

彼は頭に浮かぶ「あの技」のイメージ、大嫌いだが、強い彼の動き・・・

それを今、自らの動きに変換する。
腕の動き、いや、筋肉の伸縮にいたるまで、そのイメージをトレースする。

その音速に達する神速な突きのラッシュは、空間をも切り裂く!

"ピアシングスパイン!!”

 グザザザザザザザ!!

迫り来るその腕は、徐々にその攻撃により飛び散り、灰とかしていく・・・
彼の大技が炸裂した後、そのモノの右腕は消滅していた。

「グォォォ、バカナァァ・・・・」

だが、スルトにかかった負担も大きかった。

槍をじめんにつき、肩で荒い息をしている。 
その黄金の槍には無数にヒビがはいっていた。

もう二度目はない・・・

その状況をさっしてか、
一度後退しながらも、また奴はつっこんでくる、
まだ、左腕は健在、大きく振り上げ、高速で・・・

 くらえ・・・僕の残る全ての力を以って・・・

彼は両手で槍を構え、悪魔の腹に突き出した。
その槍には凄まじいオーラがうずまいている。

 バリィィン!!

黄金の槍が砕け散っていく・・・、いや、彼の命運もか・・・?

いや、終わっていない。
彼の槍が砕けた後もオーラは螺旋を書くようにその腹に突き刺さる!

 グチャアア・・・・

左腕をスルトの肩に刺し、悪魔の腹に、らせん状の穴が貫通していた。

スゥゥゥ〜

悪魔は全身が灰になり、風の中へ散っていった。

「やった・・・」
同時に彼も地面に倒れこんだ。



「ミラ〜、死なないで!」
自らも重症を負いながらも、
必死に全身に傷を負ったミラへ治癒の力を回していく。

彼女はもはや意識はなく、全身からの出血で紅い血だまりができていた。

「うぅ・・・、どうして・・・こんなところでしんじゃだめだよぉ」
泣きじゃくりながら治癒の力をおくる彼女の手に、誰かの手が添えられる。

「レヴン・・・」

「・・・泣いてる場合じゃない!
集中しろ、俺が魔力をかすから・・・ミラを救えるのは君だけだ。」

「・・・うん!」

添えられたレヴンの手より、彼女の体に大量の魔力が流れ込んでいく。

 ここまでひどい傷・・・使えるかは自信ないけど・・・もう、あれしかないわね。

「癒しの力を司りし神、イアよ・・・
今こそ我に降りてその大いなる癒しの力、傷つきしものを救う力を・・・」
彼女が暗唱する言葉、一つ一つが光となってミラを囲む。

"リザレクション!!”
一瞬、激しく彼女が光り輝いたと思うと、ミラの体をやさしい光が包みこんだ・・・

ミラの全身の服の裂け目から見える痛々しい傷がたちどころに癒えていく。

血色もよくなってきた。もう大丈夫だろう・・・

「よかった・・・、ほんとに・・・」
レヴンの手にすがって泣き始めた。

「よくやったな、これでもうミラは大丈夫だろ」
優しく彼女の髪をなでていた。

「あ、あとスルトもな。」

「あっ! 忘れてた・・・」

・・・

「隊長、モンスターが序序に引き上げていきます!」

「おお・・・、町は救われたぞ!!」

司令塔を失った魔物の群れは、本来の住処へと帰り始めた。

「陛下! 魔物がスオミからも、ルアスからも撤退していきます!」

「そうか・・・ご苦労、しかし、まだ安心できん、引き続き監視を続けろ!」

「はっ!」

 ・・・ガルフラントとの戦争・・・まずは俺たちの一勝ってところか・・・



「ふん、あの男、たかが魔力もない現在人の騎士にうたれるとはな・・・
よもやそこまで使い物にならんとわ・・・
まぁ、いい、現代人ものよ・・・今度は徹底的に破壊してやる・・・ククク」
彼はミルレスの大地におりたった。

そして地面に手をおしつける。

 荒れ狂う大地の精よ・・・創り主の名において汝を召喚する・・・
 いでよ・・・そして我の力となれ。

ドゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

巨大な地鳴りとともに、地面が隆起していく
そして粉塵を撒き散らし、蠢きながら形を作っていく…

その光景を真下から見上げながら男は高笑いする。

「ククク・・・これをどう対処するかな・・・?
アスク帝国諸君、そして創造の力をもつものよ・・・ククク・・・」




「やっと魔物も帰っていく・・・ ほんと悪夢のような一日だった・・・」
この騎士は、魔物の監視を言いつけられていた。
もっとも魔物も住処へ急ぐだけで戦う気もないが・・・

延々と続く魔物の列が、山の谷間に消えていくのをずっと見送っていた。

!? あんなところに山なぞないはず!

よくみると、かすかに山が動いている・・・微動だが、見間違えではない。

 確実に移動している!

「隊長、大変です、山が! 山が動いています!!」
山のように見えるそれは・・・
今は夕日にその姿をさらし、
先端についた巨大な目が、ルアスと反対方向のスオミをみていた。

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作者戯言

こんどの戦いはスルトとミラのためにかいたようなものです(笑

最近影薄いからな・・・スルト君
そんなこんだで活躍の場をつくってみました(笑

ミラの性格も、普段はすごくおとなしい反面、切れると鬼w

美人だけど男が寄り付かないのわこういう訳です(笑