I WISH ・・・20 〜始まりを告げる使者〜 「師匠〜!!」 「ミレィ! レヴン!」 ここはルアス王宮作戦会議室。 とりあえずレヴンとミレィはここに移された。 会議室ではすでに王宮の機関の責任者などが、 とても大きな、円状の席についていた。 レヴンとミレィはレイチェルの隣の席に座った。 「ねぇ・・・今から何がはじまるの?」 小声で隣のレイチェルにミレィが聞いている。 「今から、ミルレスでおきたことの今後の協議を始めるそうよ・・・ ひどいことになってるらしいから」 「あの・・・ミルレスの人たちわ・・・」 泣きそうな表情になって聞いてみた。 「大丈夫よ。ミルレスの人たちは、ルアスに今移されているわ」 ミレィの心配事を悟って、笑顔で答えた。 「よかった・・・」 安堵の表情をうかべる彼女の胸には、 きっと神官をしていた両親が心配だったのだろう。 議長らしき人が入ってきて、一番前の席につく 「今から、今日ミルレスでおきた、事件についての協議を行う。 まず、ミルレスで起こったことを村の神官、シェイルに語ってもらう、はいれ」 一番後ろの扉が開き、白い法衣、首から十字架をさげた男がはいってきた。 「パパ・・・」 シェイルも一瞬、席に座っていたミレィをみて驚いた顔をしていたが、 すぐに内容を説明しはじめた。 住民がころされたこと、自警団もやられたこと、 そしてやむなく魔法で全員をルアスにとばしたこと。 その話を、議会に出席しているだれもが重い雰囲気できいていた。 そのとき、一人の騎士がはいってくる。 「スルト・・・!」 「議長、申し上げます、ただいま門前にミルレスの使者と申すものが現れています!」 「!?」 同時刻、同じことを王に伝えられていた。 「使者・・・どのような奴だ?」 「それが・・・生気がない、まるで死人のような・・・」 「しかし、言葉を喋っております、伝言を伝えにきた、 この国にとても重大なことを ともうしております」 これは敵が送り込んだ罠か・・・? しかし逆に目的をききだすこともできるかもしれぬ… 少し考えたあと、彼は騎士に命令を下した。 「よし、そのものをここへ通せ!、ただしこの王の間、騎士団でかためるぞ。」 「陛下、使者を通します。」 そういって、王の間へ続く扉は開けられた。 国王の椅子までの道を紅い絨毯が一本ひかれ、その両側を大勢の騎士が固めている。 その光景をなんともせず、使者は王の下へ静かに近づいてくる。 否、そのものに感情などないのかもしれないが・・・ そのものは、全身を漆黒のローブを纏い、 顔はすっぽりとフードに隠れて陰になっている。 まるで浮いているかのように不自然に上下しながらゆっくりと、王の下へやってきた。 そして、闇のそこから響くような気味の悪い声で伝言を読み始めた。 「我が名はガルフラント=ザレックス・・・ 現在のマイソシアを治めるものに告ぐ・・・ おまえたちの選択肢はただ二つ・・・ 一つ、我に降伏し、我配下につくこと・・・ 二つ、我に抵抗するという道を選ぶなら・・・全て無へと帰すだろう・・・ 一週間、期限をやる・・・ どちらかを選ぶがよい。 また一週間後ここへ使者を送る・・・ そのときまでに答えを出しておけ・・・」 「・・・それだけか? やれ!」 怒りに任せて、ザックスは手で合図した。 八方から騎士が走りより、槍を使者に突き立てた。 「フン、この国は俺が治める・・・たかが殺人者にわたせるわけがない!」 が、貫かれて、そこに落ちたのはローブだけだった・・・実体がない! 「なっ・・・」 王も騎士も驚きを隠せない。 ・・・愚かな、あくまで我にたてつくというのなら、 全て滅ぼしてやろう・・・ハハハハ・・・ 虚空から、あの不気味な声が響いた。 ここで、現代のマイソシアにいきるものと、 時をも操る、ガルフラントとの戦いの火蓋はきっておとされた。 この先に何が待ち受けるか・・・考えられる人などいないだろう・・・ マイソシアの未来をかけた戦いが・・・今、始まる。
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