I WISH ・・・18 〜ミルレス壊滅〜 レヴンとガルフラントの最初の戦いがあった後。 ガルフラントはミルレスの入り口にいた。 そこはかって、彼が生まれ、彼が治めていた国であった。 フ・・・ずいぶんと変わってしまったようだ。 まぁ、そうなる運命だったのか・・・ あの時代、神官が「神の再来」を予言し、俺は時を超える魔法を創造した。 そして時を逃れてきた。 創造の力さえあれば、人間界は俺の思うがまま。 フ・・・それに、あのガキ、まだ未熟だったが、 あいつから完成された創造の力を奪い、取り込めば・・・ 俺は神をも凌駕する・・・ククク 彼は町の中心までやってきた。 今日もミルレスは、素朴ながらも神秘的で、 それ独自の美しさをもって人々を包んでいた。 広場には露店がたちならび、 幼い修道士や聖職者の卵が師範から授業を受けている。 フ・・・平和すぎる。 俺が求めるのは動乱と闘争。 俺が引き起こしてやる・・・ククク まずは、我が居城を眠りから呼び起こす。 「下賎なものどもよ、この神聖なる地から立ち去れ」 「!?」 ミルレスの人々の頭に直接響く声。 ざわめきが人々に広がる。 「なんだ・・・今の頭に直接響く声は・・・」 「は、バカいえ、神がいったとでもいうのか?」 「王」のとなりで、二人の修道士が話していた。 「き、きのせいだろ・・・」 「気のせいではない、言葉の意味がわからぬのか?」 また頭に声が響く。 そう・・・となりの異風な男から・・・ 「てめぇがいったのか? ぁ? ふざけるのもいい加減にし・・・」 グチャッ、ドサッ 修道士は言い終わる前に、腹から真っ二つに両断された。 太刀筋もみえずに、ただ突然に両断されていた感じだった。 ただ、男の持つ大剣から地が滴り落ちていた・・・ 「う、うわあああああ!!」 騒ぎを見た住人たちが逃げていく。 「こんな街中で堂々と殺人だと、上等だ、ミルレス自警団の実力を見せてやる!」 男は今、10人を越える修道士にかこまれていた。 ミルレスは軍隊は持たなかった。 が、町の治安維持と、凶暴なモンスターの退治のために自警団を配備していた。 村の中でも、最高レベルの実力を持つものたちである。 「かかれ、とりおさえろ!」 自警団の各々は男にかかっていく、が。 ズサッ、ズサズサズサズサ!! 「がぁああ!! 腕がぁああ」 「グッ・・・」 見えない太刀がが彼らを切り刻んでいく。 まさに、男は歩いているようにしか見えないのに、辺りには血の雨が降り注いでいた。 「愚かな・・・力の差を思い知れ。」 自警団は一瞬のうちに全滅し、まさに血の海に屍をさらすだけであった。 「さっさと消えろ。 死にたくなければ・・・」 「神官さま!、男が村人を切り刻んでいます!」 「何!?」 そこに見えたものは、所々に血の紅い水溜りができており、 その中を男がこちらへゆっくりと歩いてくるところだった。 「むぅ・・・いかん、全員をミルレスより脱出させる。」 神官が持っていた杖で地面を突付いた。 するとミルレスにいた全ての人々の足元に魔方陣が展開し、人々はきえていった。 人一人なく、あたりに死体が転がるだけになったミルレスの中心で、 男は剣を振り上げ、地面に突き刺した。 「永久たる時間を遡り・・・今、姿を現せ! 我が王都よ・・・」 剣がささった所から、巨大な魔方陣が展開し、ミルレスの全てへ広がっていく。 次の瞬間、空と地面が溶け出し、混ざり合うように歪む。 否、空間そのものが歪んでいく。 溶け出し、混ざり合い、引き伸ばされ、収縮され・・・ 混沌の世界が徐々に安定を取り戻していく。 眼を開けたとき、男はかってのミルレス城の王の間にたっていた。 ククク・・・かえってきたぞ、我が城が。 もう、その場所にミルレスの町はない。 かって、ミルレスがあった場所に巨大な城が出現していた。 それは、ミルレスだけが過去の時へたち戻ったように。 そう・・・それは時を越えて・・・再び、王の野望をかなえるために・・・
![]()
![]()