I WISH ・・・15 〜束の間の休息 王宮騎士団〜


ルアス始まって以来の大惨事の起こった日の翌日。

ルアスの町南半分は、昨日の戦いの深い傷跡をまだのこしている。

人々は近くの森から木を切り、土を練り、
石をひき、民家や道路、城壁を修復している。

そんな中、今朝いきなり、騎士団全員に緊急招集がかかった。

 なんか・・・やな予感がするんだよな・・・

集会の3時間前、スルトは団長リヴァルスに呼び出されていた。

─トントン

「スルトです。」

「おう、はいれ!」

「失礼します。」

散らかりまくった部屋、一番奥の机に、彼は机に足を乗せ、タバコをふかしていた。

 ・・・はぁ、何のようだろ・・・

「なんのようですか? 団長」

「お前、、、昨日の戦いで、どう感じた?」

「えぇ・・・?」
急に聞かれてあせるスルト。

「俺達は、まったくの無力だった!」
怒りで、机に拳を叩きつける彼、机に何度目かの大穴が開いた。

たしかに、スルトもどうしようもない無力感をあのとき感じていた。

ふがいない自分に怒りさえ・・・

「はい・・・たしかにそうです・・・」

 やっべ、これはすごく機嫌が斜めだ・・・

背筋に冷たいものを、スルトは感じた。

「それでだ、あのガキ・・・レヴンとかいったか、あいつに頼みごとをしてもらいたい」

もう、何を次に言うかスルトにはわかっていた。

気分が重い、まるで背中に大きな岩でも負わせられているような・・・

「ただいま〜」
重たいものを抱えながら、スルトは家へかえってきた。

「おかえり〜、早かったわね」
師匠のレイチェルが迎えた。

「師匠〜、レヴンしらない?」

「レヴンは・・・さっきミレィと出て行ったわよ、
いつの間にかお似合いなカップルになってて・・・フフ」

「!? できてたのかあの二人?」

 なんか敗北感じるよな・・・

余計に気分が重くなる。

それを知ってかしらずか、レイチェルは笑いながら

「きっと、町の中にいるわよ、夕ご飯の材料たのんだから」


ルアス広場は今日も大勢の人々でにぎわっている。

 よわったな〜、こんな中から探せるのかぁ

と、思ってたそのとき、ドンと肩を叩かれた。

「あれ〜、スルトじゃない、おっはよ〜!」

「こんなとこで何きょろきょろしてる?」

振り向くと、そこにミレィとレヴンが並んでたっていた。

「レヴン〜! ちょい探してたんだ・・・言いづらいけど、頼みごとが・・・」

「頼みごと?」

「実は・・・・」

小声で彼はそれをつげた。

「ええ〜?!」 隣で聞いていたミレィもおどろく。

「・・・柄じゃない、断る!」あっさりと拒否される。

「た、頼むよ〜、君じゃなきゃだめんだ」

「いいんじゃない? レヴン、やってみよ〜!! 仲間のためじゃん」

「う・・・」 結局、二人に押し切られてしまったレヴン。


3時間後、王宮内訓練室。

「我々は王宮を守護する誇り高き騎士である!
ゆえに誰よりも強くなくてはならない!」

「しかし・・・昨日現れた魔物に、我々は太刀打ちできなかった。
こんなことでいいのだろうか? いや、よくない!」

 今度はどんな無茶な訓練だ・・・ その場にいた騎士がみんな不安そうな顔になる。

「そこでだ! 今日は特別師範として、昨日の災いを退けた英雄にきてもらった!」

「紹介しよう、レヴン=クレイツァーだ!」

レヴンはゆっくりと、しかし緊張してでていき、リヴァルスの横に立った。

「うぉおおおおおおお!!」
騎士達から歓声が上がった。

地獄の特訓を逃れられたことからくる歓声かもしれないが・・・

「今日は師範に、魔法槍術を教えてもらう!」

・・・その場が凍りついた。

そもそも騎士は、魔法が一切使えない戦士から転職するのであって・・・

魔法は不得意なものばかりである。
これなら魔法使いに剣術教えるほうがよっぽど楽だろう。

「なぜ、魔法をいまさら!」騎士から不満があがる。

すると・・・突然、リヴァルスは槍をとりだし、地面に打ちつけた―

ハボックショック

「うるせぇ! そんな生意気なことは俺を倒せるようになってから言え!」

・・・滅茶苦茶である。

はぁ〜、騎士達は諦めのため息をついた。

「いいか、まず魔力を手に集める練習からだ。
 体全体から魔力を手に集中するようにイメージしろ。」

淡々と説明していくレヴン。

「そして、溜まりきったら、魔法を暗唱して、それの効果をイメージするんだ」

─アイスランス!!

彼のはなったアイスランスが的の人形を突き破った、

「おお、パチパチ」 騎士達が拍手をする。

が、それだけで止まらず訓練所の壁に大穴を空けた・・・

「・・・」

 ・・・レヴンは後ろから強烈な殺意を感じた。

「いいか〜、お前ら、この穴より大きな穴空けるまで今日は帰さん!」
殺意をかみ殺した笑みむけられ、背中に冷たいものを感じるレヴン。

・・・結局、彼が不満な顔をして騎士達を帰したのは夜の9時を回っていた。

騎士達は、魔力を込めるところまでは到達できたものの(補助魔法も使うため

攻撃魔法の威力は極端にひくかった・・・

だが、後々この訓練が役に立つ日が来る


「あ〜、なんて無駄な一日! 団長がからむとろくなことがない。」
帰り道、疲れた顔をしてスルトがぼやいていた。

「本当になぁ・・・俺も教えるのなんて初めてで疲れた。」

「けど、結構うまかったヨ説明♪ 私も習ってみようかしら、レヴンに。」

「・・・お前らは自分の職をもっと極めろ・・・」

「あははは、そうだね、だれかさんはいつも無茶するし♪
さ〜、早く帰ってご飯にしよう、師匠おこってるよ〜?」

そういって3人は駆け出した。

何気ない日常も悪くない・・・そうおもうレヴンだった。


-----------------------------------------------------------------------------------------------
なんか謎ですんません汗

ほのぼのとしたシーンがかきたかったなぁ…笑