第2章 :詩の魔法A


「さて、リィナ。ちゃんと勉強してるか見せてもらいますよ」

と言ってにこにこしながら師匠が私を連れてきたのは・・・・・・。

「お師匠さまぁ〜、いくらなんでもポンナイト※1はまだ無理ですよぉ〜」

半べその私・・・・・・そりゃ無理もないんだって。

この間やっと ローリングストーン※2が使えるようになったんだよ!?。

チェストポンがこの間初めて倒せたんだよ・・・・・・。

なのに・・・・・・。

も、もしかして・・・・・・歌ってはいけない詩を歌ったからお仕置きなの!?

私は半泣きのまま師匠のことを見つめていた。

"・・・・・・なーんて思ってるんでしょうねぇ・・・・・・。リィナのことだから"

にこにこ笑いながら、俺はずーっと弟子の考えてることを思い浮かべていた。

もちろんその間も手を休めることなく歌い、踊り、補助はかけ続けてるのだけど。

"無理な場所に連れて来るわけがないのに・・・・・・"

思わず顔に出そうになるけど、そこは何とかカバーして怖がるリィナを落ち着かせる事を考えた。

「必要なものは、ちゃんと言えば僕が貸してあげますよ」

そう、この間与えた課題は、確かにやっていたのを見ていたし・・・・・・。

後は思い出すだけ。

俺の言葉を聞いて、りィナはちょっぴり静かになった。

さてと、俺はリイナが何をするか静かに待つとしますか・・・・・・。



必要なもの・・・・・・その言葉を聞いて、ふとこの間

"属性とこの辺りのモンスターについて 勉強しておきなさい"

ってお師匠様に言われたことを思い出した。

渡された本によれば、ポンナイトを含むこの辺りのモンスターは "水属性" で、

土属性の攻撃をすると良いって書いてあった。・・・・・・と思う。

"えーい、迷っても仕方がない!言ってみよう!・・・・・・怒られるかもだけど・・・・・・"

「えっと・・・・・・お師匠様、水ベルトと土メダルってありますか? 」

私がそう言うと、お師匠様はいっそうニコニコしながらベルトとメダルを渡してくれた。

「はい、どうぞリィナ。

装備さえちゃんとすれば、WIS魔※3でもあのくらいは楽に倒せるものですよ〜」

そう言いながら、私の後ろを指差すお師匠様。

振り返ってみると・・・・・・槍を持ったポンナイトがこっち目掛けてきてるぅぅ。

「きゃぁぁ!!」

慌てて逃げようとする私の腕を、お師匠様ががっちりつかんでいた。

「大丈夫ですよ、リィナ。」

相変わらずのにこにこ顔で私を見つめるお師匠様がいた。



俺がリィナの後ろにいたポンナイトを指差すと、

予想した通りで、リィナは一目散でポンナイトに背を向けて逃げ出そうとした。

”後ろを向くとかえって危ないのにねぇ・・・・・・”

なーんて思いながら、俺はすばやくポンナイトにスローフォークダンス※4をかけていた。

もちろん、駆け出そうとするリィナの腕はがっちりつかんだ上で。

「大丈夫ですよ、リィナ。」

俺がそう言ってやっても、リィナは逃げ出そうとする。

「簡単には近付いて来れませんから。落ち着いて、ローリングストーンを唱えてごらん」

ようやくリィナは俺の言葉にそぉっと後ろを振り返った。

補助をかけ直し、そぉっと背中を押してやると、リィナはすばやく何度か十字を切って魔法の詠唱に入る。

指には銀色に輝くニルサークル※5が4個。

「ローリングストーン!!」

魔法の発動と同時に、岩が当たって砕ける鈍い音と、辺りに汚い水が飛び散った。

「はい、よく出来ましたね。」

そう言って俺が頭をなでてやると、リィナの顔にようやく笑顔が戻っていた。

・・・・・・作者に遊ばれてますね、リィナちゃん。 だって、いじりがいのあるキャラなんだもん(汗 しばらく本題から激しく逸れてる・・・・・・かも
※1 ポンナイト:スオミ付近に現れる水の塊の様なモンスター。          ポン、チェストポン、ポンメット、ポポ、ポンポンといった類似な敵がいる。          後に挙げた名前ほど強く、知能もあるハズ。          手に持った片手剣と盾が特徴。毬栗のような殻を持っている。 ※2 ローリングストーン:魔術師が使う魔法の一つ。大きな丸い岩を転がして敵にぶつける。 ※3 WIS魔:魔術師にはint型(知識)とwis型(知恵)があり、wis型はMPが多く、int型は攻撃力が高い。       要するに、魔術師のステータース振りの一種。       昔はintの量に攻撃力が依存されるタイプが多く、取る人は少なかった。 ※4 スローフォークダンス:吟遊詩人の使う特技の一つ。               ギターの音で、モンスターの移動速度を大幅に下げる。