リレー試作品小説 その1 降りしきる雨の中、蒼はルアス町の門をくぐった。 「あー、嫌だね雨は」 「…お前はいまだにひきずってるのか?」 紅は蒼のほうに振り向いた。 「悪いか? 良くも悪くもこういう形に落ち着いたとはいえ、何人の命が無くなったと思ッてる」 「まあ、ね」 いつもなら夕日が沈みかける景色が映える町、ルアス。今日は雨でその夕日すら雲の中に隠れている。 「あ、戻るの?」 「アジトに、だろ。どっかいくのか」 「うん、ちょっと用事があってねはははは」 少し不自然な紅。切れ目の視線を向ける蒼。 「――?」 「まあ、そういうことだから。じゃね」 瞬間的にゲートを使い紅は姿を消す。 「何なんだ、あいつ?」 蒼はいつもの場所に向かって歩き始めた。 ルアス町のはずれ、ある一つの民家。 そこが最強のギルド、《幻の伝説(アスガルド)》のアジトである。 …少なくとも昨日までは。 「……あ?」 扉を開けたら、妙な二人がいた。 「悪い、間違えた」 ろくに確かめもせず蒼は扉を閉め外に出た。 確かにこの町はどの家も同じ建築用法なため間違えてもおかしくは無い。 「疲れてるのかな…」 蒼は一度何でも屋ルエンのところに向かった。 紅との狩りで手に入れたアイテムを売り、少しの金を手に入れる。 「さて、アジトに向かうか」 いつもの蒼なら気が付いていただろう。 ただ、焦っていたのか蒼は後ろにいる妙な視線に気がつくことは無かった。 「……ここだよな。ったく、俺らしくも無い」 ノブに手をかけ、ドアを開ける。視線を上げると、相変わらずいたのは妙な二人。 「……」 「―?」 二人は男だった。片方の好戦的に見える男と視線が合う。 「誰だ、お前は」 「誰だ、テメェ?」 台詞までが一致する。 「シーザー、どうしたんだ?」 手元の本をずっと読んでいた男が視線を上げる。 「…と。お客様じゃないか。―どなたですか?」 「いや、どなたですかって、ここうちのギルドのアジトだろ?」 二人の男は視線を絡ませ、不思議そうに首を振る。 「そんなことはありませんよ」 「そんなことはないな」 「おい、」 一歩足を踏み入れる蒼。 「どういうことだ、そ―」 その瞬間、蒼は体が重力に引っ張られるのを感じた。 なんとか視線を上げると、 二人の男がハイタッチしているのが目に移り、妙なところをぶつけ意識を失った。
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