第22話『いろんな別れ』


裕也とユウトは、楽しそうに話をしている。

まるで残された時間を楽しむように・・・・・・。

その時だった。

エルに乗り移ったイアが異変を見つけたのは・・・・・・

「『皓。あなたの腕を見込んで言います。私が「行きなさい」と

言ったら、今ユウトと話している者の背後の闇を斬りなさい。』」

とイアは、小声で指図をした。

「何が何だか知らねーが、オッケー。」と皓は、ニッと笑って言った。


ユウトと楽しそうに笑ってる裕也。

その背後から、苛立たしそうに黒い闇がゴバアッ!と姿を現した。

「行きなさい。」

その言葉が出るよりも早く、皓のメデンの一撃が炸裂する!

横薙ぎの一閃が見事に当たり、闇が消えた。

周りの風景が変わる!!


サワサワサワ・・・・・・ッ

草の上を風が駆け抜ける音・・・・・・。

「・・・・・・ん?」

気が付くと、みんなはミルレスの町で倒れていた。

皓もエルもケン兄も裕也も・・・・・・そして、ぼくも。

ミルレスの町は…まるで何もなかったように、いつもと同じ雰囲気だった。

「数時間前まで火事だったのになぁ。」いつの間にか皓がボヤいた。


通りすがりの人が話を聞いていたらしい。

「そこの兄ちゃん、おかしなことを言うねぇ。火事なんて起きてないよ。」

と通りすがりの魔が笑って言った。

どうやら、彼らの中での火事に関する記憶は、ないらしい。


「う・・・・・・ん。」裕也は目を覚ました。

「ゆーや。おはよう^^」と挨拶しかけたぼくは、おどろいた。

裕也の体がゆっくりと透けていく・・・・・・。


「ゆーや、消えちゃうの?」

早すぎるよ!そう言ってるうちにぼくは、泣いていた。

裕也も一瞬ビックリしたが、ふっ・・・・・・と優しく笑って

「ぼくは、ユーレイだからね。恨みがなくなったら、消えちゃうんだよ。」

と落ち着いた様子で言ってのける。

「もっとしゃべりたかったよ。」

ぼくは泣きながら、そう言った。

「それはぼくも同じだよ。でもね、ユウト。そんなコトしたら

『君の時間が止まっちゃう』んだ。『現実世界の親』は、どうするんだい?

・・・・・・僕のように悲しませちゃいけないよ。それと、ユウト。」

「なに?ゆーや。」

「いっぱい長生きしてね。僕には果たせないけれど、ユウトなら出来そうな

そんな気がするから・・・・・・。ケン兄にも元気でやれって言っといて。」

と言いながら、裕也はまだ意識の戻らないケンタを見た。

「それじゃあ、みんな。バイバイ!!」

そう言った後に・・・・・・裕也の姿は、消えてしまった。

「ゆーや…。」ぼくは、また泣いてしまっていた。


その後。ぼくとケン兄もアスガルドを離れることになった。

「あーあ。」一番ガックリしてたのは、皓だった。

「だってよぉ。リアルと遊べなくなるじゃんかー。」

あー、つまんねっ!って空気を出しながら、イジけている。

「『仕方がなかろう。ほれ、さっさと手伝え。』」

とイア神にコキ使われ、皓はブツブツ文句を言っている。


(皓:「はぁ。エルの方が好きなのに、何で中身がイアなんだ(つ_T)」)

とユウトに感情読まれてることも知らずに、皓は思った。その側から

「エルのこと、好きなの?」

とすぐさま、ユウトからツッコミを入れられていた。

「まぁな。美人じゃんかwおまけに、おっとりしてるし。」

と開き直り気味に自白しつつ、皓は、バッグからメデンを出した。

そして、ユウト達の背後に回る。


「『ここと他をつなぐ命の糸よ。神の力により、元の世界へと戻れ』」

イア神は、『光の杖』を皓のメデンに向けた。

すかさず皓は、2人の背後の縄状のものを切った!

その途端にユウトとケンタの体がバラッと崩れる。

データの崩壊だった。

崩れたデータは、少しずつ消えて・・・・・・そして、跡形もなくなった。


「『終わったな・・・・・・。』」

そういい残すとイアの意識が途切れた。

フラッ・・・・・・と倒れ掛かりそうな体を皓が支える。

「ふぃー、間一髪。・・・・・・ってこれは、チャンスか?」

ふとボヤいたものの、フッと我に返って。

(ま、いいや。自分でそのうち振り向かせるさ。)

と開き直った皓は、エルを背負うとエルの家まで歩き出した。