第6話 ミルレス薬屋地域・・・。 「それよりも。オレLv31になったぞ。」 アプサラスのこの一言をイリュームは、思い返していた。 (ヤバイな。このままだとLv差を広げられてしまう。) 1種の危機感を感じていた。 (どうしようかな?)と考えながら、昨日の民家まで行くと 運が悪い事に空き民家は、どこかのギルドの作戦会議室に使われていた。 (嫌な事は重なるものだな。仕方がない、外で眠るか。) そう割り切ると大きな木のある場所へと向かった。 大きな木のある場所…そこは、神官の斜め後ろに立っている木だった 「よぉ、神官。」オレはそこにいた『イア神官』に挨拶した 「あら、イリュームではありませんか。どうしたのですか?」 イア神官は、何かあったのですか?と言いたげな表情だった。 「いや。寝る場所ないから、外で寝ようと思って大きな木を探してただけ。」 と事情を話した。 「そうでしたか。大きな木は見つかりましたか?」 「今、やっと見つかったよ。イア神官の右隣の木。」 とイリュームは指をさして答えた。 「そうですか。」としかイア神官は言わなかった。 「うん。それじゃおやすみ、イア神官。」 そう言ってオレは右隣の木の後ろに回った。 イリュームは手を後頭部の辺りで組み、木の幹に寄りかかると眠りだした。 時折「サアッ・・・。」と吹く心地よい風の音。 わずかに聞こえる虫の声。 ゆっくりと睡魔が降りてきて・・・いつの間にか眠っていた。 深ーーい眠りの中。イリュームは夢を見ていた。 「ここは・・・。」 炎が燃えてる・・・。周りは堅牢な壁に囲まれていて・・・見覚えのある場所。 (そうだ!ここは、サラセンの闘技場!!)と思い出した矢先 「くっそぉー!」と叫び声が聞こえた。聞き覚えのある声・・・。 振り向くとアプサラスが誰かと戦っている。 その誰かとアプサラスの様子を見ているのは、ラファンだった。 「アプサラス、止めろ!その人には勝てっこない!!だって・・・」 とっさにオレは叫んだ。 (だって?・・・その先何を言おうとしたんだ?) 何故か困惑した。 何か重大なコト言ってない気がする。 「うるへー!イリューは口出しすんじゃねー!!」 アプサラスは間合いを計りながら、イリュームに叫ぶように言った。 「止めるんだ!その人は姉さんの・・・・!!」 とこっちも叫ぶように言ったが、言葉が聞こえない。 「これで行くぜぇ!!」アプサラスが相手に向かって突っ込んで行った! 相手の前に来て拳を繰り出す刹那 「アイススパイラル!!」唱えられた呪文。 紐のように見える鋭い冷気が螺旋状になり、アプサラスに襲い掛かった。 「うぁ・・・。」アプサラスは、もろにダメージを食らって倒れた。 「?!」と驚いて目が覚めた。 辺りの景色は真っ暗で、明け方になるちょっと前くらいの時間だった。 (夢か・・・。しかし、何か妙にリアルだったような^^;) 笑うに笑えない夢だった。できることなら、回避したいとすら思う。 「イア神官、おはよう。」気を取り直してイア神官に挨拶した。 「おはようございます。」と頭を下げるイア神官。 「…何か夢でも見ましたか?」オレの顔を見て、それとなくイア神官が訊いた。 「見ました。」正直にオレは答えた。 「そうですか。イリューム、あなたが昨日寄りかかっていた大木は この町の『ご神木』です。」 イア神官の言葉を聞いて、オレはコケた。 「ぶ。ちょっと待った!何でそれを言わないんですか^^;」 とっさにツッコミを入れたオレに対し、イア神官は 「あの大木は、周りの木と一緒にあることで『神木』となっているのです。 でも、普段は普通の木たちと調和し合ってますし・・・。」 と言いよどんだ後に 「それにイリューム。凄く眠そうでしたから、説明しているヒマも無かったので」 と説明を付け加えた。 (ぐ…。確かに否定は出来ない) 「と…ともかくご神木ってことは、それ相応の力があるわけで・・・」 「その力が、『先を読む力』なのです。」 オレの一言の先を読むようにイア神官はキッパリと答えた。 「じゃあ、もしかして・・・。」 「ええ、良い夢にしろ、悪い夢にしろ実現するということですね。」 イア神官は、再び断言した。 オレは困り果てた。そして祈った。 (もう頼むから、問題起こらないでくれよ^^;)と。
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