]V−エピローグ− エルヴィスとフィスティナは、 ミルレスの小高い丘にいた。 日はだいぶ落ちてきている。 優しい風が彼女の髪を揺らしている。 先ほどまで二人はミルレスの教会で 孤児である子供たちと遊んでいた。 二人ともミルレスのその教会で育った。 エルヴィスは、まだ物心着く前 教会の入り口に捨てられていたという。 フィスティナは、8年前傷だらけで倒れているのを 外で遊んでいたエルヴィスに発見され 保護された。 彼女は記憶を全て失われていたため 教会で生活する様になった。 今も彼女は全く記憶が戻っておらず 教会で生活を始めた事からの記憶しかない。 フィスティナと言う名前も 神父が付けた名前であって 本当の自分の名前は彼女でさえ知らない。 「今回は本当にダメだと思ったんだ」 フィスティナは隣に居るエルヴィスを 見つめ話を続けた。 「ダメだと思った瞬間 貴方のことしか考えられなかった。 ただ貴方の無事だけを祈ってたんだ」 風になびく髪を押さえながら夕日を浴びる姿は 美しいという言葉が相応しいだろう。 エルヴィスはただ彼女を見つめていた。 「そういえば彼、今度騎士団長になるらしいよ。 さっき神父様が言ってたの」 フィスティナは、この雰囲気を変えたいためか 突然思い出したかのように話を切り替えた。 「ん・・・・。 本当か!? それはすごい出世だよな。 バル長老の件もあるし、 今度アイツの所へまた行ってみるさ」 エルヴィスは、彼女に見とれていた事を 誤魔化すかのように努めて大声でしゃべった。 そして、友人の出世の話に 自分の事の様に喜んだ。 遠くから二人を呼ぶ声がする。 教会の子供たちが 木の枝を手に持って 駆けてきていた。 「フフ、貴方に剣を教えて欲しいみたいよ」 フィスティナは優しくエルヴィスに 微笑みかける。 「俺は物を教えるのは 苦手なんだよなぁ・・・」 少し困ったようにボソっとエルヴィスは フィスティナに返した。 「頑張ってね」 彼女はクスクスっと笑っていた。 日が完全に暮れるまで ミルレスでは笑い声がこだましていた。 エルヴィスも子供の頃に戻ったように 無邪気に笑っていた。
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