―とあるとあるモンスターのお話・
ただ、あのときの恩を返したかった・・・・―


むか〜しむかしのお話です。

そう、誰もしらない、もし誰かが知っていたとしても、もう忘れ去られてしまったお話です―

いつものことか、

いつあったことなのか、

誰がかかわったのか・・・・・・・それは誰も知りえません。

 

そんなお話です―

 



           ―ChapterT・物語の起源―

 

『古いものには魂が宿る』

そんな話を皆さんは聞いたことはないでしょうか。

 

人間が使っているうちに、人間のさまざまな思いを感じ取って、
そうして気の遠くなるような長い長い時を経て、物にもこころがやどる―

そんなお話を聞いたことはありませんか?

 

これは本当に昔々のお話です―

 

ルアスの王宮の中の、ほの暗い倉庫のなかにそれは横たわっていました。

贅沢に、金で作られた鈍く輝く小さな塊。
ほこりにまみれてはいましたが、それさえなければ見事なものだったでしょう。

 

それは、小さなチェスのコマでした。

 

小さな子供の手ぐらいのチェスのコマは夢を見ていました。

あまりにも幸せで、はかない夢を。

 

小さな金の塊から、繊細な気配りの元にほりこまれ、小さな箱に仲間達とつめられて、
小さな店の端っこに置かれながら太陽を見る日を心待ちにしていたこと。

その箱をこどもの手がたどたどしく揺らしていたこと。

 

きらびやかな装飾のある部屋で、家族の楽しそうな声に囲まれて自分のあるべき位置にたっていたこと。

 

子供が大きくなるにつれ、忙しくなり、忘れ去られてこの中でずっと眠っていること―

そしてある日・・・・・・・・・箱からこぼれて床に転がったままになっている―

 

あまりにも長く眠っていました。それはそれは長く。

その間に魂が彼にやどって・・・・・・・・・・・・・・・彼はこころを持ちました。

 

           ―Chapter2・見知らぬ国―

 

彼は、気がついたときにはとある国にいました。

アスガルドの世界に住む、人間の表現を借りれば、『不思議の国』というところでしたが、

もちろん・・・・・・彼はそんなことは知りませんでした。

 

目が覚めたときには、いつの間にか見知らぬところにいました。

その上に―自分の姿が変わっていることに気づきました。

 

<・・・・・・・・・・・・・・・?>

 

・・・・・・彼は自分に起こったことが理解できませんでした。